踊り念仏をする方々の個人的な住居スペースでのインタビューから時代を超越した空間としての河原での集団の踊りをたった50分程度の低予算の作品内で同時に起こしていることに驚く。舞台装置を設営する際に木札のようなものの位置が少しズレているのを丁寧に指摘し配置し直すなんてことない動作をカメラに収めた儀礼的態度にうっとりするし、あまり関係ないけど時空を越えた画面繋ぎの途中に大いなる河の流れを挿入するオリヴェイラ的な編集がなされていることに胸がざわめいた。

河川が流れるのをやや高い位置からキャメラが見下ろす。そこから右にパンすると、すすきの広がる土地の一ヶ所で、円になって踊る集団が見える。カットが変わってやや煽りぎみの位置から、ゆっくり前進移動しつつ踊り念仏を踊る小集団を、適確なキャメラワークで画面におさめる。
あるいは田植えをする人物を捉えたショットはどうか。水に反映する人物を捉え、そこにわずかに波紋が描かれる。カットが変わり、田植えをする人物の手元のショットがスローモーションで捉えられる。弾ける水飛沫、水面に描かれる波紋。官能的な水の描写には誰もが感嘆のため息をつく。
これほどすばらしいショットで描かれる『をどらばをどれ』が傑出した作品であることは疑いようもない。

人の顔がとにかく素敵