てんむす

ふたりの人魚のてんむすのネタバレレビュー・内容・結末

ふたりの人魚(2000年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

プライムにて。
虚構・記憶喪失風。想像の物語なのか実在するのかをめぐるお話。
恋愛映画で語り手目線の作品をあまり見たことがなかったので新鮮だった。映像が人間の視線だと感情移入がしやすい。実際にそういう意図があるらしい。
ただの恋愛映画というわけでもなく、中国の市場化や個人の意識の変化が題材なのかな。
恋愛映画にはメンヘラチックな物語を求めているのでこれはこれで好き。
ズブロッカや太腿のタトゥーなどモチーフも良い。映画にモチーフとして出てくるお酒はすぐ飲みたくなってしまう(中二病)。
自分が好きな90年代のウォン・カーウァイの作品と退廃的な雰囲気が似ていたのも良かったし気に入った。香港に比べたら結構廃れていたけど。 ローファイな映像もとてもエモーショナルだし自由を感じた。
観ている間はそうでもなかったが、雰囲気を楽しむのにまた見返したいかも。素敵な小品だった。

物語としては、マーダーが出所してから物語が交差して複雑になる。
メイメイが語ったマーダーの「僕」の中の物語では、マーダーがムーダンを見つけた時点でマーダーは生きる理由がなくなった(ので死んだ)。「僕」とメイメイはメイメイにそっくりなムーダンが実在することは本当だったのだと知る。そして冒頭のシーンに戻る。その後、「僕」は永遠などない、次の物語を待つことにするという最後の台詞に至り、映画(「僕」の物語)は終わる。

台詞だけでいえば、「愛しているなら私を探して」は美しいし、「永遠のものなどない。次の物語を待とう。」というのも格好いい。

少し間違えれば陳腐でダサくなりそうなところを絶妙なバランスで素晴らしい映画に仕立てていると思う。

ずっとこの物語の中にいたいような気分だったが、台詞の通り永遠などないのだな。市場化された世界では、虚構と個人の物語しか存在しないと言われたような気がした。