三樹夫

ガメラ2 レギオン襲来の三樹夫のレビュー・感想・評価

ガメラ2 レギオン襲来(1996年製作の映画)
3.9
ガメラの敵には、なりたくないよね😊
前作の1年後、北海道に飛来物が落下。植物怪獣レギオンは札幌、仙台で暴れさらに電磁波の多い首都東京へ向かう。自衛隊はレギオンの進行を止められるかという、前作のもし現実に怪獣が現れたら路線を踏襲し、自衛隊出ずっぱりのミリタリー要素がさらに強くなっている。もし現実に怪獣が現れたらというか、もし敵国に攻められたらともとれる内容で、長谷川初範の「まるで見えない軍隊に侵略されるみたいだ」などからレギオンを敵国のメタファーとして描いているようにも見える。北海道から攻めてくるというのでロシア意識しているのかな。実際に冷戦時代はソ連が仮想敵国であった。怪獣映画でありつつも自衛隊映画でもあるというぐらい自衛隊が活躍する作品となっている。
飛来物が落下し、とんでもないデカさの火のライター、ビール工場で瓶が破壊、そして地下鉄での襲撃へと、事態が徐々に大きく深刻になっていく過程が王道の演出で描かれる。地下鉄でのレギオン襲撃などハリウッドっぽいシーンでは、正面切って思いっきりハリウッドっぽいことしても目も当てられない状況になるので、カットが割り細かく、シーンの長さもそれほど長くなくとボロが出ないようにしていると思えた。
ガメラは地球の守護獣なのは変わらずだが、子供の味方というか藤谷文子を守るガメラで前作より少女の味方感が出た。

特撮では地表から人間が怪獣を見上げるアングルを中心とし、前作同様カメラ前の建物をより作り込みリアリティを出し、路地で人間が怪獣を見ているというアングルになっている。
また今作ではケレンが増え、ガメラ飛行から着地して横スライドしながら火炎弾連射や、ビーダマンみたいな必殺技など派手になっている。レギオンのマイクロ波シェル発射時のバッと開く感じやレッドロッドなど、ウルトラマンの怪獣感や使徒感が出て様式美的な楽しさがある。

自衛隊大活躍の作品を作っているうちに、のめり込み過ぎたというかやりすぎたんじゃないのかと思うところがあり、小林昭二の「今度は絶対に守ろうや」はさすがに引っかかる。どう考えても太平洋戦争では守れなかったから今度はという意味で、無邪気にちょっとカッコいい台詞を言わせてみたぐらいの軽いものだったのかもしれないが、太平洋戦争において日本は何一つやましいところのない悲劇のベビーフェイスみたいな感じに美化されており、『はだしのゲン』で描かれていたような大日本帝国は全くなかったことになっている。
リアルタイムでこの映画を観ていた若者世代が今のネトウヨのボリューム層だったり、ネトウヨに染まるオタクの多さだったり、ノンポリ気取りの冷笑系で実のところは無自覚的に保守思想でただの体制の後方支援者だったり、勿論この映画が原因でそうなったと思っているわけではないが、そういったメンタリティが少なからず内包されているような象徴的な台詞に思えた。ネット軍師とかが絶頂してそうな台詞。軍とか国とかでかいものに自己同一化し、終わることのない美化と修正と都合の悪いことからは目を背ける人間が珍しくない現状もあってさすがに引っかかる台詞だ。

第一幕は北海道が舞台ということもありどうでしょうの面々が出演している。またどうでしょうでは映画のBGMを番組内で使用しており、ある総集編ではこの映画の出演時のエピソードが語られている。
安田顕は出動要請で部屋に飛び込んでくる自衛隊役で、予告編にも音声が使われている。ミスターは避難を呼びかける市役所職員役で出演するも、監督と特監が喧嘩していたため緊張して噛んでしまいさらに吹雪いてきて撮影は翌日に持ち越される。その上名簿の出し忘れで大泉洋がクレジットされないと色々やらかしている。車の撮影はまた元の場所に戻るのが時間かかったりミスられると結構厄介で、さらに撮影が翌日持越しとなると制作部あたりは絶対陰でブチ切れていると思う。最終的にこの映画の一番の出世頭になってしまった大泉洋はノンクレジットで地下鉄の乗客で出演。床下から物音がし足元が映るがその時にはいていたのは親父の靴らしい。現場におけるウザい役者ムーブをかまし、却下されてもなお細かい芝居をしている。足元が映った時に足を動かすのはアドリブ。

水野美紀の髪型は一周回って近年復活も流石にもう下火か。シースルーバングというらしく、90年代はトサカみたいになってるのが特徴で主張が強いが、令和版はあくまで自然な感じを目指すもので、一応リバイバルではなく韓国発の流行り。
水野美紀は基本ミニスカなど、女の子への執着が増している。可愛く撮ってるというよりかは執着してるみたいなネチっこさ。また男の頭の中にだけあるような女性像で、カマトトぶってるけどエロい奴やって、お前が勝手にそう思ってるだけだろみたいな。次作で女の子への執着はより増大する。
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