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渚の果てにこの愛をのくりふのレビュー・感想・評価

渚の果てにこの愛を(1969年製作の映画)
3.0
【成りすまし成りすまされ】

『モア』からミムジー・ファーマーつながりで、翌1970年出演の本作を知り、U-NEXTにて。仏伊合作のまったりエロサス。

ミムジーはこちらでも景気よく“安心してください穿いてません”しているがそれより、リタ・ヘイワース晩年の出演作って所で興味を惹かれた。

家出息子の帰還で、残された母と妹は活気づくが、その男は別人だった…。

イタホラ味を含めたせいかもしれないが、仕上がりは雑。が、散らばる要素に魅力アリの映画だった。

カナリア諸島でのロケが絶妙。SF映画にありそうな荒涼とした異世界感で、登場人物の心象に最適だ。

線の細い主人公はどうでもよくて、ミムジーはまあ勝手にやっててって感じで、やはりリタ姐さんに惹かれる。特に、彼女の実人生と重ねてみると。

当時推定52歳。“刑務所のリタ・ヘイワース”こと美貌絶頂期『ギルダ』の彼女はもう居ない。でもギルダは、男の欲望に捏造された女だったから。マルガリータ・カルメン・カンシーノ本人じゃあない。

本作の撮影時、発症はしていたが診断は下されなかった、若年性アルツハイマー病を抱えての出演だった筈。息子の記憶に溺れてしまう役は、現在の視点からは残酷なほどにハマっている。

セックスシンボル、ピンナップガールとして一世を風靡しつつ、演技派としては認められなかったと思うが…改めて、悪くない女優さんだ。刻まれた演技力の年輪は、画面にちゃんと顕れている。

彼女のお陰で、ミムジーのペラさがよりよく、引き立ってるね。

結末はあるあるの一つで、ファム・ファタールに囚われた男の話のようだが実際はミソジニー漏れ出し、そこから仕返ししているように映る。これは、この時代あるある、なのだとも思うけれど。

邦題は詐欺。愛じゃなくて檻でしょう。

<2025.1.24記>
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