響介

うつせみの響介のレビュー・感想・評価

うつせみ(2004年製作の映画)
4.7
キム・ギドク監督作品。
ある日DV男に束縛されている女の家へ留守宅を転々としている青年が忍び込み、2人は出会う。2人は自然に惹かれ合い逃避行を始める。
とても静かな映画でこの2人は最後まで全くセリフを発さない。
彼は留守宅に入ると必ず手洗いで洗濯をしたり、物を修理したり、留守電の確認を必ず怠らない。
そして毎回、留守宅の写真や肖像画を背景にドヤ顔で自撮りするのが笑える。眼力が凄い。他にもボクシングをやっている夫がいるお宅に忍び込んだ時、グローブで思いっきり殴られたところや、刑務所で警官から隠れる術を身につけていくところなど、笑えるシーン多数。夫のDV男が船越英二似なのもリアリティあってちょっと笑える。
繰り返し流れるナターシャ・アトラスの『Gafsa』の選曲もマッチしていて素晴らしい。
体重計を改造するシーンはどのような意味があるのだろう。存在を消す=重さを失う、空虚なものにしようとすることと結びついているのだろうか。
ラストはスコリモフスキの『早春』やエドワード・ヤンの『カップルズ』に匹敵するほどの美しく唯一無二の接吻シーン。
結局最後まで、この男は存在は、夢なのか現なのか、分からないままだった。
「私たちが住んでいるこの世が現実なのか夢なのか誰にも分からない」
響介

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