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ブレードランナーのmanicureのネタバレレビュー・内容・結末

ブレードランナー(1982年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

無理矢理なラブストーリーと、ぎこちなくてちょっと笑っちゃうアクションシーンは80年代のハリウッドの匂いをプンプンするが、ビジュアルは今の映画に負けないぐらいだった (4Kリストア版がおすすめ)。未来のロスアンゼルスが宇宙のゴミ箱みたいになっていて、SF映画で珍しい退廃的な色に染められている。ずっと雨が降っていて、リドリー・スコットの出身地のロンドンを連想させる。以降のサイバーパンク映画だけではなくて、攻殻機動隊等の漫画まで巨大な影響を与えた作品。SFアクションではなくて、ゆっくりと進むフィルム・ノワールなので、派手な展開を期待しないようにご注意。

人間とは?というテーマだが、そこまで深く掘り下げる感じではない。記憶と思考さえあればアンドロイドも人間として扱うことができるのか?結果は、腐敗した人類に比べると、レプリカントの方が仲間意識が強くて、人間と同じ苦しみを味わっている。レプリカントは魅力的な存在に違いないが、主人公の存在感が薄すぎてなかなか感情移入ができなかった。大した存在理由もなく、ただ言われたことをやるだけで、なぜレイチェルと繋がるのかも不明。自分の記憶を疑っているようだが、ただ自分の部屋でお酒を飲んでいて、憂鬱なムードに浸っているシーンが無駄に多い。

世界観が凝っていてビジュアルも素晴らしいが、脚本とキャラクターにはもうちょっと拘って欲しかった。

[デッカード問題について]
元々の脚本ではデッカード=人間の設定だったらしいが、曖昧なセリフが原因で、監督のリドリー・スコットがデッカード=レプリカントだと思っていたらしい。デッカード役のハリソン・フォードは、デッカード=人間だと思い込んでいるらしい。脚本家の二人は、お互いの意思を勘違いしていたそうで、結果はようわからん。実は当時の試写会で大失敗して、シーンを足したり削ったり、映画の方向性がゴロゴロ変わっていたらしい(7バージョンもある)。

初期劇場版は一般の好みに沿って、デッカードとレイチェルが明るい未来へと逃避行しているエンディングや、わかりづらいところを説明するナレーション等が足されていた。リドリー・スコットの最終版では、ユニコーンの夢でデッカードのアイデンティティーを疑わせるシーンが戻されて、エンディングも曖昧なままに。正直、ユニコーンの折り紙が見つかったときは、レイチェルが警察と組んでいるのだと思った。デッカードは人間でもレプリカントでもどちらでもいいが、レプリカントと恋をした人間の設定の方がしっくりくるかな。
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