仙元誠三のベストではない。女版松田優作映画を撮ろうという企画らしいが、黒沢直輔と桃井かおりの折り合いが悪く、監督がセット撮影の完了した段階から現場に来なくなり、それ以降は仙元誠三が演出したとのこと(「キャメラを抱いて走れ!撮影監督仙元誠三」p300〜303)。
ビール工場での銃撃戦、クライマックスシーンは全て仙元演出。名キャメラマンが必ずしも名監督たりえない法則は仙元誠三にも当てはまると言わざるを得ない。遊び心はあるものの、ビジュアル先行型で演出意図不明のショットが散見され、1シーン全体に通すべき一本の太い線(エモーション)が通っていない。
桃井かおりの演技は臭いとも取れるが、松田優作っぽい動き方を念頭に置いており、確かに優作の演じてる様がありありと浮かぶ。だがなまじ上手いがために、優作の不在がより寂しくなってしまうのだ。