グラッデン

ロスト・イン・トランスレーションのグラッデンのレビュー・感想・評価

4.5
ル・シネマ渋谷宮下『ゴーストワールド』公開記念の期間限定フィルム上映で鑑賞。

個人的には約18年ぶりの鑑賞。内容が内容だけに忘れている描写も多かったので、物語自体を新鮮に見れた。むしろ本来は存在しないカットの存在を信じていた(汗)

初鑑賞時は「今そこにある」風景だった渋谷と新宿の街並みは、20年経過すると「なちぃ」風景となっていることを実感。また、撮影〜劇場公開時は既に携帯電話は普及していたものの、カメラ機能は未熟、SNSは勃興期で存在感は示されていない。さらに言えば、日本を訪れる外国人観光客も珍しく感じていた時期でもある。

あの時代の東京だからこそ描ける【孤独】と【繋がり】に強い時代性を感じる。ソフィア・コッポラ監督が後年に手がけた『SOMEWHERE』も同様のテーマが提示されているが、親子という関係性を媒介とする同作品と、東京という異国の街とビル・マーレイとスカヨハの不思議な関係性で構成される本作では質が異なるものだろう。

先日『PERFECT DAYS』を鑑賞した時に、この作品のことを思いだした。映画的な撮り方、というよりは生活者とは少し違った視点で見る東京が新鮮に見えたからだ。時代は移り変わったが、街中に溢れる言葉を理解できないシャーロットやボブが、目や耳で感じる東京の神秘性は本当に今見てもグッとくるものがある。

日本人の視点から見れば、作中の日本描写に対して批判的な意見もあったと思うが、あくまで物語であり、違和感を意図的に作り出すとともに、そこにミステリアスな魅力を演出したのだと理解に及ぶ。そして、その魅力は海外からの観光客を現在の日本に呼び寄せる要素でもあるだろう。

変わるものと、変わらないもの、双方を感じる鑑賞体験だった。