都

ロスト・イン・トランスレーションの都のレビュー・感想・評価

3.8
自分が大学の授業を通して考えてきたこととかなり重なり合っていた

翻訳によって恣意的に意味を捻じ曲げられてしまったり、細かなニュアンスが損なわれてしまったりということはあるけど、それを言語だけでなく文化全体で考えるというのはかなり面白かった
他国の人がみるそのフィルターがこの映画では翻訳の役割を果たしていて、それによって損なわれる宗教的なありがたみ、食事など文化的な違いが現れる
文化差によって疎外感、孤独感を持ってしまうことはかなりリアリティがある

観客にとってもそれは襲いかかるものだった
僕達日本人はこの映画を字幕で見ることになる
翻訳によって失われるものを伝える映画を翻訳で見てしまうという皮肉が現れる

時代の影響でもしかしたら旅行や留学などの際に疎外感は感じづらくなってるのかもしれないけどそれでも多文化共生というものを考える上で有用な映画なのではないかと感じる

主人公らが英語でのコミュニケーションを当たり前だと感じているのはある種英語帝国主義が根底にあるようにも思えて異国というフィルターの重要性が浮かび上がる

ただ、ボブとシャーロットの関係性が深まるにつれて雰囲気の重要度が上がって、テーマ的要素がぼやけてしまった感も感じる

彼らは英語と孤独感という共通言語を通して仲を深めていく
その中で東京という街を受容していく
でも、また違和感を感じて馴染めきれない
どこかで魅力を感じつつ、どこかで否定もしている
この辺りは映画の深みではありつつも分かりずらさでもある

個人的には恋愛要素の比重をもう少し軽くして疎外感や孤独感に関してまた別の展開で深みを出して欲しかったという気持ちもある
都