ぺんじん

切腹のぺんじんのレビュー・感想・評価

切腹(1962年製作の映画)
4.9
凄い…最初から最後まで途切れない緊張感!ピーンと張り詰めた鋼鉄の線が切れた時、また一つの惨劇が始まる…
舞台は江戸時代初期。泰平の世が訪れつつも、江戸幕府によって国の取り潰しが相次ぎ、浪人となった侍たちには厳しい現実が待っていたのだった…
やはりこの映画の中心となるのは切腹。もはや形式化してしまった「切腹」というシステムに個人やその家族が巻き込まれてしまう様子をこれでもかというほど細かく描いていて辛い…この個人の意志より集団のしきたりが優先されてしまうのはやはり日本社会の縮図。This is Japan. 大した事の無いもののせいで人が死んでゆく…辛過ぎる…
とにかく仲代達矢の飄々としていながらも、その眼から放たれる決死の眼光が凄すぎる!一歩も引かないと決めた人間の眼だ…そしてそれに対する三國連太郎、丹波哲郎の笑顔がまぁ悪いこと悪いこと。カメラワークも抜群で、脚本と役者の表情も相まって本当に息がつけない感じだ…
そして引き絞った矢が放たれる後半の怒涛の展開!仲代達矢の狂気に満ちた殺陣がもう凄過ぎる…最後に向けて一瞬の隙も無い殺し合い…うわぁ嫌なラストだよ…個人の生き死にとは関係無しに保持される体制…
この溜まっていた地獄が最後に爆発する感じは『キャリー』が近いかも。とにかく脚本、カメラワーク、役者、音楽全てが噛み合わさってこの世の地獄を生み出す凄み!あぁやっぱり辛い…脱帽!!
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