蔵なもし

切腹の蔵なもしのレビュー・感想・評価

切腹(1962年製作の映画)
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せっかくの節目なのでクラシカルな作品を、ということで、アカデミー作品賞を受賞した王道の作品をとも思いましたが、以前に「一命」を鑑賞して、オリジナルである今作に興味が湧いていたので、選ばせてもらいました。

リメイク作である「一命」と大筋は変わりありませんでしたが、緊張感は比べようがないほど今作が優っています。

愛娘と孫が病に苦しんでいるというのに、暮らしは困窮していて自分では何もしてやれない。最後の頼みの娘婿もみすみす無残に殺されてしまう。
命を賭して何かを訴える、若しくは復讐を果たすというよりも、悲しさや虚しさに狂人と化してしまったと思わせる仲代達也の鬼気迫る演技はさすがでした。

モノクロであったりカメラワークなど、現代の映画には見られない手法なのに、不思議と古さを感じませんでした。基本的には会話劇であることも関係あるのかもしれません。
無茶苦茶ですが、切腹を望む浪人と家老の会話だけで物語を見てみたくなりました。