スポック

切腹のスポックのレビュー・感想・評価

切腹(1962年製作の映画)
5.0
リメイク版の『一命』を鑑賞後の翌日に観る。

『武士の面目はうわべだけを飾るもの。』

武士道の精神にある歪みを描いた作品である。
日本人の国民性の根幹の一部分を成す武士の生き方は、世界にも誇れる日本人の国民性の高さの一因である事は確かである。
どの様な制度でもその一部に歪みや不条理さがある。
日本史が中国や朝鮮の歴史とまったく似ない歴史をたどりはじめるのは、鎌倉幕府という素朴なリアリズムをよりどころにする「百姓」の政権が誕生してからである。自らの農地を勝ち取った。土地を所有することで恥ずかしいことを他人にしない「名こそ惜けれ」の倫理観が生まれた。
戦時に戦ってくれる領民(農民)達を束ねるための心得。武士はどう振る舞うべきか。
農民より朝早く起きてやるべき事をやる
嘘を言わない
他人に正される事を恥と思え

数々の規律を守る武士の精神が形骸化し始めた天下泰平の江戸時代の物語が描かれている。

リメイク版の『一命』も人間の感情の機微を描いた良い作品だっが、この作品はより武士の厳しく命懸けの生き様が描けていた様に思う。