半兵衛

ふろたき大将の半兵衛のレビュー・感想・評価

ふろたき大将(1955年製作の映画)
3.3
原爆が投下されてから五年がたった広島を舞台に、原爆による被害で親からはぐれ孤児として生きてきた少年が身寄りのない子供を引き取る施設に入り人間として成長していく姿を描く。

教育映画というジャンルで作られた映画だけに多少綺麗事のような展開になっていることは否めないが、それでも勉強や作業が人並みに出来ず「ノロマ」扱いされ孤立して行く主人公の状況とある特技を見つけてから立ち直るまでのドラマが堅実に描かれておりリアルな人間像を構築し嘘のないドラマを提供しようとする監督やスタッフの誠実な姿勢が感じられる佳作に仕上がっている。

そしてこの映画の主人公を演じる石橋蓮司の熱演ぶりが映画に血の通った人間像をもたらしている、前半のやさぐれた少年像、そして風呂焚きという特技を見出だしてから勉強や仕事に熱を入れて頑張る姿、行方の知れない母親を想い学園のある島から抜けだし広島の中心街へ行こうとするも先生や友人たちのことを思い浮かべ断念する姿。子役によくある監督の言うがまま溌剌と演技するというより、役柄と誠実に向き合ってその人間ならどう演技するかを考えながら演じる少年石橋蓮司のスタイルに現在までバイプレーヤーとして多彩な役を演じる彼の原点とその信念を汲み取れる。

舞台となる広島の島でのロケーションも印象的。

ラスト、主人公が母親と対面し施設を離れることになったときみんなに語る誠実な台詞に感動する。そこから船で島から去るときいつまでも学校の人たちに手を振る主人公も忘れがたい。

こういう教育映画でも格調のある音楽を提供してドラマのランクを上げる伊福部昭の音楽も耳に残る、ちなみにオープニングで流れるサウンドは『怪獣大戦争』のテーマにそっくり。

ちなみにこの映画をはじめとして十代の序盤は子役として活躍していた石橋だが、年齢を重ねるにつれ活躍の場が減少していくことになる。このままではいけないと思った石橋は巨匠今井正監督の『越後つついし親不知』に出演することになったとき、この作品で監督に評価されなければ俳優を辞めようと決意。そして満を持して監督に自分の演技の出来を聞くと、「百点満点ではないけれど及第点」と言われたためそのまま俳優を続け現在に至っている。
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