「ハメット」
冒頭、1928年米国。
大恐慌前のサンフランシスコ。
ジャズの音色。タイプを打つ男。中国娘の失踪。
チャイナタウン、夜の街、カジノ、暴力。
今、私立探偵を辞めた作家が失踪事件に巻き込まれて行く…
本作はマルタの鷹などで有名なダシールハメットを主人公にしたゴアズ原作をドイツ人作家W. ヴェンダースが監督したミステリー映画で、
この度BD化され初鑑賞したがショットの切り返しが画期的…と言うか色調が暖色で納められ、
非常に暗い部分の基調が綺麗だ。
影や夜景のシークエンスのトーンは4k画質で観たくなる圧倒した夜色を魅せ付ける。
監督と言えばパリ、テキサスやさすらいの様なロードムービーが印象的だが、
本作は全くそれらとは違う異様を放つ。
また役者が豪華である。
中にはホワイトドッグを監督したS.フラーも居てビックリした。
にしても仮に監督の名前を伏せて観てもこれがあのヴェンダース作品とは分からない…
それ程、特徴が無いのはコッポラとの衝突のせいなのか…。
だが彼と知った上で観ると所々には彼らしき演出を感じ取れるのも事実。
所で、同じドイツの作家ファスビンダーが得意とするセットで組まれる街中の風景が本作にはある。
構図はやはり素晴らしいと感じる。
物語はハメットと言う探偵作家が1人の女性の失踪に巻き込まれていく模様を映し出す…
余談だが、本作はコッポラとヴェンダースが激突して撮影の中断などをして制作費も年数もかかったらしい。
それでも自分が得意とするロードムービーを完全に封印して、
あの大空を映したロングショット等を撮らずにここまで作品を仕上げたのは凄いと感じる。
彼はハリウッド映画を心の底から好きなんだなと感じた1本だ。