一人旅

アメリカを斬るの一人旅のレビュー・感想・評価

アメリカを斬る(1969年製作の映画)
3.0
TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
ハスケル・ウェクスラー監督作。

1960年代後半のシカゴを舞台に、現地報道カメラマンの奔走を描いたドラマ。

『バージニア・ウルフなんかこわくない』(1966)でアカデミー撮影賞を受賞した名カメラマン:ハスケル・ウェクスラーの初監督作品で、シカゴを舞台に報道カメラマンの主人公:カッセリスの仕事上の奔走を通じて60年代アメリカの病める部分を炙り出した社会派の佳作に仕上がっています。

冷戦、JFK暗殺、長引くベトナム戦争、ヒッピーカルチャー、大衆デモ、貧困、黒人差別…といった60年代アメリカの現状と問題を一報道人の視点により切り込んだ内容が特徴ですが、ドラマ的エッセンスとして主人公とシングルマザーの恋愛劇を付加しています。作風は一貫してドキュメンタリーテイストで、中でもクライマックスにおける街を埋め尽くすデモの群衆と警官隊の衝突は、まるで実際にその場に居合わせたかのようなリアルな手触りを持って、混沌とした60年代末期におけるアメリカ社会の現状をありのままの姿に映し出しています(この1968年シカゴ民主党全国大会ではベトナム戦争に対する抗議を掲げる人々が集結し投石行為等に発展、それに対して警官隊は催涙ガスや暴力的手段を用いて制圧しました。結果的に群衆の暴動を企てた容疑で7人(通称:シカゴ・セブン)が起訴されました)。

そして社会の事象を撮って報道する中立的立場の主人公が、今度は別のカメラによって撮られる側へとその立場を変化させてゆく結末に、第三者的立ち位置を保持できない=アメリカ社会という大きな集合体の一構成物、としての報道人の逼迫した現実を皮肉混じりに伝えています。
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