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フェノミナのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

フェノミナ(1985年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

ドイツのある町で少女を標的にした連続殺人事件が発生する。そんな中、寄宿学校にジェニファーという美少女がやって来る。彼女は虫が大好きで、その上、虫と交信する能力を持っていた。彼女は現地で知り合った昆虫学者と共に姿なき殺人犯に迫っていくが……。

美と醜の対比が記憶に残るホラーの秀作。
残虐な殺人と劇中に見られる退廃芸術の如き美術。
それらが主人公の美しさとの対比になり、独特な存在感を発揮している作品だ。

不穏なメタル音楽の中、スローモーションや凶器のアップを多用したカット割りで、犯人の顔や特徴をまるで見せない殺人シーンはもはや職人芸。

謎の殺人犯を美少女と虫が追うという組み合わせは、他に例を見ないユニークな設定。
虫は生まれ持った習性で殺人犯に迫っていく。
この虫の視点からの描写は、今見てもかなり奇抜である。

登場人物もキャラが立っている。
清順さと艶やかさの間の14歳のジェニファー・コネリー演じる寄宿学校に入る美少女の主人公を始め、孤独な昆虫学者や、その看護師にして友人のチンパンジーなど、特異な状況下で存在感を発揮。

美しい主人公が危機に陥った時に現れる「虫」のビジュアルはCGなど無い時代の特撮は強烈で、生々しい迫力を持って迫ってくる。

物語は残虐だけでなく、フーダニットのミステリーとしての側面もある。
犯人に次第に迫る緊張感は否応なしに見る者を引き込むはずだ。

犯人は実は学園の女教師とその息子。
女教師は、重い奇形があり、少女を狙っては殺人を繰り返す息子を匿って育てていた。
母として純粋に愛していた女教師は、子供を守るために秘密に近づく人間たちを殺していたのである。

クライマックスには手に汗握ること必至。
犯人探しのサスペンスから一転、奇形の化け物に襲われるホラーへと急展開。
そして虫が主人公を助け、息子を殺された女教師が主人公を襲うのを今度は殺された昆虫学者の飼っていたチンパンジーが救うのである。

美少女と殺人鬼という組み合わせは様々なホラー作品で扱われてきた。
美女が受難する姿が見たいという、美しくはない者たちの嫉妬とイケナイ妄想の具現化である。
犯人が分かる場面で、被害者の遺体にウジ虫が湧くプールに美少女が落ちるのが強烈。
これが嫉妬でなく何であろう?

美少女と虫との「異種間の交信」といった超能力的要素を取り入れる事で、恐怖に自ら立ち向かう、また自らが恐怖の対象となる美少女の悲哀にスティーブン・キングの小説のような異形への愛も感じられる。

「本当に恐ろしいのは人間である」と謳うスラッシャー(殺人鬼)ホラーに留まらず、人間の身勝手さに昆虫や動物が制裁を加えるのは、人間に対する自然界の怒りも感じさせる。
虫と美少女が心通わせる所は、小規模な「風の谷のナウシカ」(笑)。
醜いのは虫か?人間か?
そんな問いかけも含めて、美と醜の対比が強烈に記憶に残る作品である。
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