TaiRa

越前竹人形のTaiRaのレビュー・感想・評価

越前竹人形(1963年製作の映画)
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途中までどういう話なのか分かんなかったけど、結局は不憫極まりない話だった。

ゴリゴリに童貞な竹細工職人の山下洵一郎のもとへ若尾文子がお嫁さんに来てくれるというラノベみたいな話。遊郭から抜けて嫁に来てくれた若尾文子を崇めこそすれ指一本触れられない夫の童貞っぷり。父親のお気に嬢に手を出せないファザコンっぷりが災いした挙げ句「オラにとってはおっかあだから」とのたまう。一体どんな禁欲生活なのか。セックスしたいが出来ない(すればいいのに)夫が森へ走り出したりする。嫁さんモデルの竹人形作りに性を出して肝心の嫁さんをほっとくのもオタクっぽい。欲求不満でやきもきした若尾文子が昔の客だった西村昆と再会して、レイプされて妊娠してしまう。西村昆のキモ怖さ。そんなタイミングで中村玉緒のアシストもあって夫が踏ん切りつけて夫婦関係をやり直そうとする。タイミングが悪い。意志は弱いが基本的に善人の夫婦が只々不幸な末路を迎えるという。妊娠を知った時の若尾文子の反応とかが生々しく、焦りや不安が観ている側にも共有される。子供を堕ろす為ほうぼう歩き回る若尾文子がどんどん弱って行く。中絶が違法で堕胎罪だけがある(これ未だにあるけど)時代なので八方塞がり。追い詰められるほど画面が豊かになる。宮川一夫の流石の水面描写。水に浸かる長い黒髪という間接表現。船頭役の中村鴈治郎が謎に迫力ある。若尾文子が玄関の外の暗闇に伏せっているのを雷の閃光が照らす場面は怖いし凄い。エピローグ観ながら、どんな気持ちになれと?って思った。
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