三樹夫

ケープ・フィアーの三樹夫のレビュー・感想・評価

ケープ・フィアー(1991年製作の映画)
3.8
暴行で刑務所に14年投獄された男が自分の弁護を担当した弁護士を恨み復讐するという、あたおか男に粘着されるサイコスリラー映画なのだが、この映画は前述の通りあたおかに粘着されるサイコスリラーなのは間違いなく、しっかりとそのようなストーリーが展開されるのだが、違和感が生じる独特の雰囲気が漂う。
そもそもニック・ノルティ演じる弁護士が不倫はしてるは違法行為はしてるはのクズ野郎で、さらにこの映画にはやたら血の気の多い奴しか出てこない。警察すらわりかし邪悪というこの世の地獄みたいな世界になっている。デニーロはあたおかで怖い粘着の仕方をしてくるのだが、弁護士はこのクズ殺された方がいいじゃないかと、デニーロに粘着されることにあまり同情心は沸かない。
そして性的なイメージと宗教的なイメージが多分に盛り込まれている。サムの妻と娘ともキャミソールの肩ひもがずれてコケティッシュな見た目だったり、不倫相手だったり、娘の下着姿だったりで性的なイメージで溢れている。デニーロの指をジュリエット・ルイスが舐めるのはものすごいセクシャルだ。デニーロは性的な欲望に突き動かされるキャラクターなのだが、サム一家にも歪んだ性的な欲望が存在している。そんな性的に歪んだサム一家をデニーロが粘着し苦しめるのは宗教的な試練にも見えてくるし、サムが罪の告白をしたりと宗教的なイメージが盛り込まれている。

ストーリー自体はリメイク元の『恐怖の岬』に沿っているが、あちらの方はサムが理不尽にマックスにつけ回されるバーナード・ハーマンの主張の強いBGMが不安を煽りピッタリの正統派サイコスリラーとなっている。
『恐怖の岬』も妻娘がどこかコケティッシュで、特に船内での卵で妻胸元ヌレヌレ肩紐ズリ落ちシーンがセクシャルだが、スコセッシは『恐怖の岬』を観て妻娘がエロいなと即座にピーンときたのか、そこを拡大解釈して本作のようになった印象を持つ。

物語が動いているかカメラが動いているかで話がグイグイ進み、やたら勢いのある物語展開になっている。ものすごい勢いで話が進むし、一種のグルーヴ感が出て異常さすらある。勢いの力技みたいなところが笑えてきてしまうのがあって、車の下にへばりついていたのは爆笑した。物語が動いているかカメラが動いているかでテンポを上げるのは他だと『ロボコップ』がある(というか『ロボコップ』から始まった手法と言われている)。
あたおか男に粘着される恐怖は、似たような映画だと人間界で指折りの怖い顔した男レイ・リオッタに粘着される怖い映画『不法侵入』がある。『不法侵入』はシンプルにあたおか男に粘着される不条理恐怖となっている。
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