タクマ

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズのタクマのレビュー・感想・評価

4.2
劇場版第12作。
不思議な映画館へ迷いこんだ野原家とかすかべ防衛隊の面々は西部劇の世界に閉じ込められる。そこは時間の経過と共に現実の世界の記憶を忘れてしまう世界で…と言う話。
個人的には歴代のクレしん映画の中で「なんでこれが隠れた名作になってしまってるのか?」と思う名作でありいつもは大人のお姉さんにばかり鼻を伸ばすしんちゃんの純粋な恋を描いた話でもある。その恋の相手がいつも見たいな大人の女の人ではなくて年上は年上なんだけど中学生位の少女のつばきちゃんっていうのが面白い。
しっかりとしたストーリーがある上でも笑いの要素も忘れない劇場版クレヨンしんちゃんですがこの作品は歴代のシリーズと比べてもギャグは少なめでどちらかとと言えばシリアス寄り。
弱いものが権力者達に虐げられる重い世界観です。そんな中でもといた世界の記憶が薄れていく現実としんちゃんが戦う姿は過去の記憶を忘れると言う事の悲しさや寂しさを観客に突きつけてくる。自分も忘れちゃったけど本当だったら忘れたらいけない思い出や忘れたくなかった事ってたくさんあったハズだよなあ見ていて思いました。
本作はそんな私達に想い出と共に想起する事を問いかけてくる物語だ。忘却が進む世界は私達が生きる現実世界の辛さからの逃避の象徴であると共に人を突き動かすのは誰もが思い描く明日への希望と過去の美しい想い出だと言う作り手達の魂がかすかべ防衛隊をヒーローへと覚醒させる。ラストのつばきちゃんとしんのすけの恋の結末はとても切ないがそれでもまた巡り合いたいと言う思いと全ての映画ファンの映画に対する愛に照準を合わせたラストに暖かい涙と共に心地の良い余韻で胸が一杯になった。この余韻を味わう為に何度でもこの映画を見たいと思わせられるお手本見たいな作品だった。過去の暖かい想い出があるからこそ前を向いて生きろと言うテーマでは大人帝国と共通する部分ではあるけど向こうは昭和のあの時代のエモさを感じたい人達に向けた映画なのだとしたらこちらは数々の西部劇のオマージュも含めて純粋な映画愛に溢れた作品かな。
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