湯っ子

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズの湯っ子のレビュー・感想・評価

3.8
西部劇に詳しい人はいろいろ小ネタを楽しめそう。知識のない私は、西部劇といえば荒涼とした大地、威張り散らかす保安官が男を馬で引き摺り回しているイメージなのだが、見事にそのままの世界観だった。

例によって異世界に迷い込んだ野原一家はとりあえずそこで生活をしていく。ひろしが強制労働を強いられる一方、みさえは酒場の歌姫となるが、客たちには大ブーイング。かあちゃんが性的な存在として見られるのは耐えられなくて、オバさんと罵られる方がマシな子供たちへの配慮を感じる。

謎の少女つばきちゃん。さすがに露骨には描いていないけど、悪玉親分からの搾取を感じさせる。それから、映画の中に入るお話ってことで、「カイロの紫のバラ」の逆パターンだったりして…なんて思った。あの可憐さと薄幸な感じがミア・ファローと被るし。レンタルビデオ店主の自称マイクは間違いなくマイク水野よね。

悪玉親分の名前が「ジャスティス」で、ジャスティスに考える暇も与えられず搾取され支配され、それに甘んじてしまう人々に、何かわれわれ庶民を重ねてしまったりする。
しかし、その場にある正義=ジャスティスではなく、自分の中にある正義=カスカベを忘れないしんちゃん。しんちゃんはいつも変わらない。それがヒーローの証。同じくいつも変わらないボーちゃんが街外れにテント暮らし、ネイティブアメリカンな風貌で同じくカスカベへの思いを忘れず、しんちゃんの心強い相棒になるところも良い。もちろんいつもの大団円に終わるのだが、けっこうシビアなところも多い作品に思えた。
湯っ子

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