ピエロの頰には涙が描かれている。チャップリンの頰には涙は描かれてはいないけど、いつも涙が透けて見える。ピエロの姿を、彼の生きた時代の街に溶け込むように再現させたら、あのいつものスタイルになるんだろうな。
この作品のチャップリンは素顔だけど、やっぱりその表情や物腰から、頰の涙が透けて見える。
彼の芸はやはり素晴らしい。会話の中で見せるギャグも舞台上の演技もキートンとの共演も素晴らしかった。
ただ、第一印象が「苦手」から入っている私なので、彼の語る数々の名言は「説教くさい、うさんくさいじいさんだな…」という感情が先立ってしまい、全く印象に残っていない。ほんとごめんなさい、U-NEXTにたくさん入ってきたからみんな観てると思うけど、目立とうとしてわざとこういうこと言ってるわけじゃないのよ、信じてね。
若い美人が大好きなチャップリンにしては、ちゃんと彼女と年相応なナイスガイを用意してあげたところが良かった。「街の灯」もこの作品も、無償の愛がテーマのようだけど、最初っからずっと無償の愛なわけじゃなくて、自分の願いと天秤にかけて悩んだのちに相手の幸せを選んだという話だと感じました。
私はこの映画を名画たらしめているのは、「テリーのテーマ」だと思う。この曲に彩られるラストシーンは本当に美しい。