LEONkei

母のLEONkeiのレビュー・感想・評価

(1963年製作の映画)
3.3
『私なんか何にも出来ない女だけど命を生む〈産む〉ことができるっ』と、其れまで慎ましかった乙羽信子が気丈に吐き出した言葉にハッと息を呑む。

小さな印刷工場のツンっとしたインクの油臭い匂いと染み付いた黒ずんだ指、額に玉の汗をかいた夫婦は無言で機械と向かいながら何を思う。

杉村春子や殿山泰司の泥臭い演技は内面から滲み出る苦悩と生き抜く力強さが錯綜し見るものを惹きつける。

戦後まもない広島と言う地で時代性が有るにせよ、親と子・生命の尊さはどんな時代だろうが関係ない…、と思いたい。

些細な事を気にし履き違えた自己都合で個の権利や自由平等を求める余り、他を見失い想像力の欠如によって人間にとって何が大切なのか忘れている。

この現代日本は余りにも平和な時代が続き、命の尊さ大切さ有り難さを見失っているような気がする。

無機質でのっぺりとした人間の皮を被っただけの有機体になってやしないか..★,
LEONkei

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