LEONkeiさんの映画レビュー・感想・評価

LEONkei

LEONkei

映画(3216)
ドラマ(1)
アニメ(0)

危険な関係(1959年製作の映画)

3.5

最高級なクリスタルガラスのバカラでも100均の平凡で在り来たりのグラスでも、二階の窓から舗装された硬いコンクリへ落としたら割れてしまう


ラクロの小説『危険な関係(Les Liaisons dang
>>続きを読む

アノニマス・アニマルズ 動物の惑星(2020年製作の映画)

1.0

馬の蹄鉄は冷たく朝靄の大地を踏み
鹿の角は勇ましく太陽を突き抜き
犬の遠吠えは夕闇に悲しく響く

一度人間と動物と立場を入れ替わって考えて見れば、動物の気持ちが分かるかも知れないと考えるのは人間の方だ
>>続きを読む

赤い殺意(1964年製作の映画)

4.0

生々しく〝今村昌平〟が描写するのは人間の奥底に秘めた剥き出しの本能、誰もが内面に封印している様々な理想や欲望を泥臭く表現

グロテスクな蚕が桑の葉を小刻みに貪る乾いた音は欲望の囁き、自分の領域では物足
>>続きを読む

ミューズ 造られた理想の彼女(2015年製作の映画)

1.5

創造性は金で買えるのか買えないのか…

理想とは現実の暗闇の中で輝く一瞬の線香花火のように、その美しい火花を掴むことは難しいもの

もし仮に理想が現実となったなら、其れはその瞬間に理想ではなくなり現実
>>続きを読む

ロンリー・ガール(2009年製作の映画)

2.5

歩き疲れたなら…
生きることが全てではない

丘の上の枯れた果てた芝の上に座る赤い服の少女と白い老犬は、互いに遠くの海を見つめる背中越しのカットが印象的

新しい道を歩けば…
死ぬことが全てではない.
>>続きを読む

鳴りやまぬ鼓動(2015年製作の映画)

3.0

在りふれた日常の中にドラマは沢山隠されている、鳴りやまぬ鼓動は自分以外は誰にも聴こえない

慣れない俳優陣とペルーの街並みに若干の戸惑いを感じるが、絶え間なく生きる独白は詩的で感慨深い

他人と他人が
>>続きを読む

あのこと(2021年製作の映画)

3.0

選択肢の不在

悩み辛み苦しみ難儀非情の社会に少女は艱難辛苦する

例え其れが若気の至りで羞恥心より欲望が勝ったとしても、選択肢の不在によって人間は尊厳の欠如に陥入る

後悔する余裕さえない少女の心身
>>続きを読む

ロベレ将軍(1959年製作の映画)

3.9

或る正当性は、或る不当性。

矛盾と不条理に満ちた人間の尊厳を奪う狂った世界の中で、常軌を逸し仄かな明窓を求め滑稽に迷走する喜劇。

地位も名誉も階級も空虚なものだと知ったとき、人間は朱に交われば赤く
>>続きを読む

静かなふたり(2017年製作の映画)

2.2

沈黙が苦痛にならない関係を自分は築きたい、この沈黙が好きなんだと

愛とは苦痛なものなんだと分かったとき、愛から逃げ拒んできた

存在しているだけで世界は美しい


良く言えばナチュラル悪く言えばぎこ
>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.2

暮れてゆく年は身にそふ老いなれど春待月のいそがしきかな(蔵玉集)

この世界が素晴らしいと思うか窄らしいと思うかは自らの感性の問題、金や地位や名誉ではなく豊かな感性を育めているか否か

社会を憂い人間
>>続きを読む

ホラー・エクスプレス/ゾンビ特急地獄行(1972年製作の映画)

3.0

ドラキュラ伯爵役と言えばホラー系映画の大スター〝クリストファー・リー〟で『吸血鬼ドラキュラ』が最も印象的。

その吸血鬼ハンターなど怪奇映画の大スター〝ピーター・カッシング〟は『吸血鬼ドラキュラ』で〝
>>続きを読む

乱れからくり(1979年製作の映画)

2.0

作家〝レイモンド・チャンドラー〟が生み出したハードボイルド小説で登場する探偵〝フィリップ・マーロウ〟の様になりたくて…。

職なし、金なし、夢もなし、安易に探偵社に志願して即採用の探偵物語。

内容は
>>続きを読む

リラの門 4K デジタル・リマスター版(1957年製作の映画)

4.0

役立たずのロクデナシは酒に溺れて苦しみを紛らわす、セーヌ川の水がワインに変わればいいと…。

しかしロクデナシの描く絵空事は儚い夢だとしても、其の姿は虚しくも美しい人間のロマンチシズム。


全てのシ
>>続きを読む

アンノウン・ボディーズ(2017年製作の映画)

2.0

もう少し犯人の動機など人間関係を含めた背景を描いてくれないと面白味が半減する。

人気小説を原作としたスウェーデンの『ミレニアム』やデンマークの『特捜部Q』は良く出来ていたので、同様にベルギーの人気小
>>続きを読む

ピクニック(1936年製作の映画)

3.5

自然と人間の対比がバランス良く描かれ、一瞬の出来事は情熱の戯れと平静な直向き。

其れがドラマティック。



そんなに遠くに行かなくてもいい。

小さな公園のサクランボの木の下でシートを敷いてシンプ
>>続きを読む

殺人カメラ(1952年製作の映画)

3.3

真面目にコツコツ働いても全く報われない、我が物顔で闊歩する気に食わない奴らは殺してしまえッ!!

デス・ノートならぬデス・カメラを手に入れた貧しい写真館の男の喜劇。

何故そんなに慌てて走るんだという
>>続きを読む

FALL/フォール(2022年製作の映画)

3.0

馬鹿と猿は高い所が好き…。

登山家〝ジョージ・マロリー〟は言った「なぜ、山に登るのか。そこに、山があるからだ」

何故、彼女らは命の危険を犯してまで高い塔に登るのか…、そこに塔があるからだと言ったか
>>続きを読む

ロバート・アルトマンのイメージズ(1972年製作の映画)

3.8

逃れられない幻影の盾に対峙する精神構造の歪みに人間は、夢幻泡影に塗れながら真の姿を蒙ることはできるか。

この世の不思議か自分の事を最も知っているのは自分自身なはずなのに、自分の思考が何処か遥か遠い異
>>続きを読む

ニーナ ローマの夏休み(2012年製作の映画)

2.0

奥が深そうで奥は浅く、
意味が有りそうで意味は曖昧、
面白そうで面白くない。

無機質で比較対象的な建築物の構図や洗練された描写はとても美しいが、物語との整合性が弱く其の美しさが無駄に思えてならない。
>>続きを読む

林檎とポラロイド(2020年製作の映画)

3.0

林檎は記憶力の低下を予防する果物と言われている。

司馬遼太郎が何かの書き物で言っていた『林檎〈りんご〉は日本語としての発音の響きが賞でて美し』自分も同感だ。


年齢を積み重ねるとともに記憶は永遠で
>>続きを読む

色情旅行 香港慕情(1973年製作の映画)

1.5

九龍半島の北東端にある啓徳空港の上空を旅客機は滑走路No.13に、いま正に機体を傾け最終進入体勢で着陸しようとしている。

ビル群ギリギリを低空飛行する世界で最も危険でパイロットにとっても最も難易度が
>>続きを読む

ミス・メドウズ(2014年製作の映画)

1.5

いくら相手が極悪人だとしても実際やってることは物凄く残酷で恐ろしい必殺仕置人…。

しかし其の残酷で恐ろしいお仕置きが全く表現されていないのが残念で、ギャップ感を出したかったのか其れも違和感と緩い描写
>>続きを読む

宇宙のデッドライン(1960年製作の映画)

2.0

これは宇宙のデッドラインではなく人類のデッドライン、例え人類は滅びても宇宙も地球も当分なくなることはない。


よくあるタイムトラベルな『猿の惑星』のプロットと若干似通っているが1960年から観た20
>>続きを読む

希望の灯り(2018年製作の映画)

3.5

更地に忽然と建つ郊外の大型ショッピングセンターは人間社会と隔たり、ある種ユニバース的な巨大要塞で異質な隔離空間。

陳列棚を霞め走る暗闇のフォークリフトは浮遊する宇宙飛行士の操縦ユニット、資本主義の象
>>続きを読む

犯人は21番に住む(1943年製作の映画)

2.5

連続殺人事件を追うミステリーに於いて居場所を特定する『犯人は21番に住む』と言う強気のタイトルは、デパ地下の試食でA5ランクの松阪牛のステーキや大間のクロマグロの大トロを好きなだけ食べさせるような強気>>続きを読む

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)

2.2

癖の強い個性的な人物が沢山登場しているのに実際は物凄く少ない登場人物と言う、一本でもニンジン、一粒で二度美味しい、一粒で三度美味しいと言うのもあるらしいが徳なのか損なのか良く分からない作品。

当然な
>>続きを読む

素直な悪女(1956年製作の映画)

3.3

ベッドで寝てる〝ブリジット・バルドー〟をミシェルがカラダをゆさゆさと揺すって起こすと、寝ぼけて『ふぇーーーーッ』と仔ヤギの鳴き声の様な奇妙で間の抜けた声が幼気で可愛い。

此れがあるから自分は俳優の声
>>続きを読む

汽車を見送る男(1953年製作の映画)

3.3

あの汽車の行先は楽園なのか地獄なのか、男にとっては夢のまた夢。

オランダの商社に長年経理主任として地道に勤める汽車が大好きな白髪混じりの中年男は、誠実で正直で几帳面で道徳心が高い故に予期せぬ不測の事
>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

2.0

色々な意味を含め令和版らしい『ゴジラ-1.0』は老若男女家族全員で楽しめるココロに柔和な印象。

時代性の創作だとしても在るものが無く無いものが在る違和感は否めない、突っ込みたい所は多々あるが70周年
>>続きを読む

乙女の星(1945年製作の映画)

3.5

純粋で美しく穢れのないココロは上品で繊細、だからこそ傷つきやすく脆い…、いのち短し恋せよ乙女。

恋をするから月や星が美しく見え、恋をするから月や星が悲しく見える。

見えないものが見え、見えるものが
>>続きを読む

Smile Before Death(英題)(1972年製作の映画)

3.5

一種独特の世界観を確立している70年代イタリア・エロティック・サスペンスは(必ずしも全てがサスペンスとは限りません)昔々深夜放送のテレビで鑑賞したもので、家族が寝静まったリビングで罪悪感に苛まれながら>>続きを読む

聖なる泉の少女(2017年製作の映画)

3.5

天高く風に舞う灰色の高積雲は壮大な山岳を包み静寂の湖は冷淡に沈黙する、山岳地帯の薄い空気は大自然が独占し人間の居場所はひっそりと片隅に。

トルコと国境を接するジョージア南西部のアチャラ地方の田舎で先
>>続きを読む

獣人(1938年製作の映画)

3.0

引かれたレールは変えられなくても目的地は自分自身で変えられる…。


石炭、油、煙、熱風に煽られながら真っ黒になって機関車を走らせる姿は過酷だが手際良い、確実に目的地へ進み絶対に軌道を逸脱しない引かれ
>>続きを読む

告白的女優論(1971年製作の映画)

2.5

人間が識別可能な表情は、喜び、驚き、恐怖、嫌悪、怒り、悲しみ、無表情の7種類。

女優とは人を欺くプロ…。

大衆に晒す其の顔は真実を覆い隠す偽りだったとしても、人々のココロを揺さぶる力を女優(俳優)
>>続きを読む

ザ・ホエール(2022年製作の映画)

3.0

今にも雨が降りそうな曇天の空は鉛色でドス黒く寂寞に染まる、美しく鮮やかな緑色の地面を覆い隠す隔たる現実。

何かが始まり何かが変わり何かが終わる、冒頭数秒間の情景が最も印象に残る。

人間は出会った約
>>続きを読む

ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)

3.8

信じることは悪ですか善ですか?

何かを信じると言うことは自分自身を信じなければ何も信じることはできない。

信じることは善か?悪か?
運命を委ねる決断に於いて正解か不正解かを考えることより、決断する
>>続きを読む