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スター・トレックVI/未知の世界のmidoredのレビュー・感想・評価

3.6
劇場版スタートレックの6作目にしてオリジナルシリーズの完結編です。長年惑星連邦と確執のあったクリンゴン帝国が衛星の爆発により危機に陥り、紆余曲折を経てキトマー会議にて和平条約を結ぶにいたるというスタートレック史に残る重要エピソードを描いています。

もはやメインの登場人物は還暦を超え、ストーリーも宿敵との和平の是非を問う政治的な内容です。カッコいいメカで小憎らしい悪役をぶちのめす娯楽SF映画を期待する人には相当地味な作品だと思います。

ただ、これがあったからこそスターフリートにウォーフがいてベラナがいるので、スタートレック全シリーズのファンにとっては熱い作品です。関係性は不明ですが、ウォーフが同名の別人か先祖という設定でカークとマッコイの弁護人としてゲスト出演もしています。

スタートレックには元々ナショナリズム色の強い面もあり、ドラマではアメリカ合衆国の権利章典をおがむ宇宙人が出てきたりします。なので、日系のスールーがエクセルシオ号の艦長になっているのも、かつての敵を盟友として未来へ共に進むという今作のテーマと日米関係を合わせているようにも思えます。日米関係は今や盟友どころか以下略の話ですが。

無重力状態を描いたシーンも印象的でした。スタートレックには珍しいシーンです。ラベンダー色の血液がブヨブヨと空中遊泳して壁に付着するさまは国際宇宙ステーションで宇宙飛行士がやってくれるデモンストレーションのようでした。

スタートレック・フランチャイズも昨今活気を取り戻し、毎年のように新シリーズや新エピソードの発表で賑やかです。地球で引退生活を楽しんでいたピカード艦長を宇宙へひっぱりだしたと思ったら、今度はパイロット版のクルー達を主役とする『ストレンジ・ニュー・ワールド』シリーズが始まったそうで、観る方も休む暇がありません。

旧シリーズに愛着があるのでなかなか追いつけないというのが正直なところです。未知の世界は若者たちの物だという今作のお爺さんスポックの言葉に共感を強める今日この頃です。
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