泣き笑いありで、日本映画におけるロードムービーの金字塔
偶然知り合った3人の男女が車に乗って、釧路、網走、阿寒湖、美幌峠、帯広、狩勝峠、夕張など北海道道東を巡る。
偶然の出会いが最後は二組の男女の幸福に結びつく。当たり前だけど、人は支えあつていることが分かる。
小山内美江子氏の訃報を聞いて、産経新聞の連載「話の肖像画」で武田鉄矢がこの映画が金八先生へのステップとなったことを語っていたのを思い出してしばらくぶりで鑑賞、人生の機微がほとんど分からなかったからか、前回の記憶はほとんど無かった。
昭和感も満載、トランザム(多分)の歌によるCMソングに乗ってマツダファミリアが登場、ピンクレディの渚のシンドバッド、イルカのなごり雪がカーステレオから流れ、夕張での「銀座のカンカン娘」の生演奏はなぜかPPM風、この映画のモチーフとなったドーンの曲「幸せの黄色いリボン」が挿入歌に入れば、と想像してしまう。道東の各地も賑やか、貴重な昭和の映像資料だろう。
前半はほとんどが昭和50年代のギンギラした欲望を隠さない武田鉄矢の怪演で笑わせてくれる。前記連載によれば勝手にアドリブを多数入れた模様。後半は影ある男、島勇作を演じる高倉健の語りで主役となる。この作品が任侠映画からの転機となる。出所後すぐに立ち寄った食堂でビールを飲む表情がリアル。
渥美清も警官役で登場、桃井かおりも様々な表情を見せて好演。私にとつての桃井かおりは2年後の「ちょっとマイウェイ」からなので、とても新鮮。
何度もリメイクされるほどのストーリーながらも、令和の今だとこんな物語は成り立つのかな、と感じる。昭和も遠くなりにけり。
同じ山田洋次脚本の寅さんシリーズも見たくなった。
「俺、何もしないよ。」
「お前、それでも九州の男か。」
「あんたがうんこしなきゃ、こんなことにならなかつた。」
「あんたつて、勝手な人だねえ。」
「島さん、行こうや、夕張。」