ハンカチに込められたもの
日本産のロードムービーって中々ないんですよね。
日本は細長いからすぐ海に出れたり、隣町にすぐついちゃったりと、ロード感がうまく出せないじゃないかしら。
でもね、ロードムービーに最適な場所が日本にもありますよね。
そう、北海道。
その北海道を旅する3人の若者の物語。
高倉健、武田鉄矢、桃井かおり。
この3人が織り成す人間模様。
武田鉄矢がすごくチャラくてコミカルで、いいキャラしていました。
金八先生のイメージが強いから強烈でしたね。
そんで、あまりにもチャラいから高倉健に怒られるシーンがあるの。
そこが最高に面白い。
「九州男児ってのはなぁ!」
健さんだから言えるセリフです。
そんな、健さんが冒頭でカツ丼とラーメンをいかにも旨そうに食うシーン。
2日間何も食べずに撮影に挑んだそう。
腹ペコの演技、必見です。
もはや演技じゃないか。
そして、桃井かおり。
「キスだけよ~」がとっても印象的。
焦らしの名演ですね。
武田鉄矢と桃井かおりの掛け合いはほんとに楽しくて、でも終盤になるにつれて二人が健さんのために真剣になっていく。
それがすごくグッときます。
途中で出てくる渥美清の存在感や、倍賞千恵子の健気さは、さすがの演技力。
昭和を代表する俳優って格が違います。
人間の出合いや別れ、そして人を思う気持ちや思いやる気持ちを純粋なまでに描いた素晴らしい映画です。
ただ、個人的にはラストがちょいと不満なんですが···
さて、この映画のこと色々考えてみたんです。
黄色のハンカチってなんだろうって。
この映画を見て、最初に思い浮かんだのがギリシャ神話なんです。
ミノタウロスの伝説。
その話の中でミノタウロス退治に行ったテセウスの生死をその父親オイゲウスが旗で知ろうとします。
生きていれば白、死んでいれば黒。
どちらかの旗を船に掲げるように父子で約束を交わしていたわけです。
この話の結末にはここでは触れないですけど、この伝説と今回の映画で共通しているのが、旗とハンカチと物は違えど布切れ1枚で重要なメッセージを伝えようとしている点です。
そもそも幸福の黄色いハンカチには原作があって、アメリカの小説家ピート・ハミルという人がそれを書きました。
この、黄色いハンカチを巻くということ自体がアメリカに伝わる風習なようです。
そのルーツがギリシャ神話にまで行き着くと言いたい訳じゃないんです。
紀元前の人々も、現代の人々も同じ感覚を持っているという事がすごくおもしろい。
高倉健が黄色いハンカチを心待にしていた感覚は、オイゲウスが息子の無事を願う気持ちと同じだったんだな。
時空を越えて人間の心が通い合った瞬間でした。
空想が過ぎましたね。
それも映画の醍醐味です。