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戦争と青春のmhのレビュー・感想・評価

戦争と青春(1991年製作の映画)
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東京大空襲が題材で今井正の遺作。
製作・脚本の大澤豊(「青葉学園物語」とか「せんせい」の監督さん)の味が濃い。気になってウィキると今井正はこのとき79歳だったのでなるほど。実質、大澤豊監督作みたいになってる。金策のためにお名前を借りたみたいなことだったのかもしれない。
前半、学園モノで後半は長崎の原爆という構成だった「せんせい」よろしく、今回もはっきりとした二部構成。
前半は、徴兵忌避者・非国民視点の戦争なんだけど、制作陣のイデオロギーから逆算するに、「活動家(もしくは共産主義者。もしくはマイノリティ)にとっての戦争」というテーマでいいんじゃないかな?
北海道で朝鮮人労働者に混じって日雇い労働。行方を追う憲兵が出入りしたために近所にもバレ、恋人の家には「非国民」の張り紙が貼られる。このビジュアルははじめて見た。
東京大空襲については後半から。
その再現が圧巻。飛び続ける火の粉、大量の避難民、燃え盛る町並み。そうかと思えば、火災が進んだあとのひとが少なくなった往来なんかも抑えている。大量エキストラと巨大セットの資金はカンパによって実現したとのこと。独立プロのノウハウが引き継がれているのが嬉しいね。
この映画は、東京大空襲のシーンだけでもと取れてる。
大澤豊作品につきものの説明セリフが、工藤夕貴による自然な演技で打ち消されてるのも良かったです。
「わたしは高校二年生」とのモノローグの最中にピアスが光ってるのはちょっとどうかと思ったけど、まあ、細かいこといってたらきりがない。そもそも、焼け残った木の電柱がまだ残ってるなんてことはありえんからね。
「英霊の家」などのプロットもなんだかんだで珍しい。
今井正作品としてみたらなんのこっちゃわからんので、大澤豊作品として消化するとすべて腑に落ちるという、評価の難しい作品でした。
面白かった!
mh

mh