ENDO

ロンリー・ハートのENDOのレビュー・感想・評価

ロンリー・ハート(1986年製作の映画)
4.3
只々涙。ミシシッピ州ヘイゼルハースト。石女のおぼこい長女キートンは祖父の残した南軍旗の飾られたデカい屋敷に1人で住んでいる。手入れの行き届いた庭に彼女の過ごしてきた孤独な時間が凝縮されている。歌手の夢破れた次女ラングは近くに住む妻帯者シェパードと焼け木杭に火が付いて、朝まで湖で戯れる。その夜のドライブ、雑木林にレジャーシート、送迎後のキス、年甲斐もなくて恥ずかしい。最高。三女スペイセクは十代半ばの黒人青年と肉体関係を持ち、彼に暴行を加えた夫の腹部を撃つ。一筋縄では行かないストーリー。猫と一緒に首を吊った母の謎。脳出血で危篤状態の祖父の話題を口に出した途端に笑ってしまう感情。スペイセクが夜中に1人でサックスを吹き始めると青年との情事がうつされた写真が弁護士によって持ち込まれる。姉に知られまいと、弁護士と踊っていたフリをするキュートな振る舞いにやられました。あと医学書の皮膚病のページを開いて「気持ち悪い!」と叫びながら興味本位でやっぱり見ちゃう場面とか。夫からの電話が原因でスペイセクが実行しようとする縄とナイフとガスでの自殺の三段活用がハイライト!庭の梢を見上げるキートンとシャンデリアに紐を通して椅子を蹴るスペイセク。手に汗握る。終盤、キートンには卑猥な写真も自殺未遂も伏せられている。知らせないという優しさは残酷でもある。それから誕生日ケーキの蝋燭を吹き消すというという一時的な幸福が訪れ映画は終わる。キートンが誘った男が家に来て(本当に来るのだろうか?)、3人の間を裂く前に。何も解決していない分、3人の笑顔で静止したその瞬間が余りに儚く眩しい。テス・ハーパーが"チキン"と呼ばれるウザい従姉妹を演じていて素晴らしい!
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