いろどり

太陽の男たちのいろどりのレビュー・感想・評価

太陽の男たち(1971年製作の映画)
4.0
12歳でパレスチナ難民になった原作者ガッサーン・カナファーニーの同名タイトルの映画化。かなり粗い映像ではあるけど、作品の存在自体に価値があるのだと思う。政治に翻弄されるパレスチナ難民の問題に真っ向から向き合った力作。原作に興味が湧き、読むことにした。

前半は少し眠くなるも、クウェートに密入国する3人と密入を斡旋する運転手の顔と名前を必死で記憶する。近隣のシートからはいびきが聞こえた。手に汗にぎる後半は喉が渇くので水分の用意が必要。空の給水タンクの中に隠れて検問をやり過ごすのだが、砂漠の直射日光で給水タンクの中は灼熱地獄。7分を過ぎれば命を落としてしまう。リアルタイムでイラクとクウェートの検問を体験する時間はハラハラドキドキが止まらない!手元に水はあるのにこちらまで我慢してしまう!

鑑賞後のトークショーが濃密で価値のある時間だった。少しネタバレあります。
イラクとクウェートの検問所の間をノーマンズランドと言い、そこで朽ち果てることや焦熱地獄のトラックはまさに難民キャンプのメタファー。世界はパレスチナ難民を援助しても根本的には助けない。原作では著者がパレスチナ人に対して、政治的主体性を持って声を上げろというメッセージを込めたのに対し、出版から10年。パレスチナ人の解放軍などが出てきた(パレスチナ人が声を上げた)ことにより、映画ではアラブ人に対して、声を上げているパレスチナ人に応えよというメッセージが込められているとのこと。

パレスチナ難民問題にパレスチナ人としてメッセージを発した原作に、シリア資本でエジプト人監督が映画化した今作。国境という一本の線に命を左右されてしまうパレスチナ人の運命が悲しく心に響いた。
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