【実在の元帥ロンメルの生涯】
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監督:ヘンリー・ハサウェイ
製作国:アメリカ
ジャンル:戦争
収録時間:88分
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これは名作。ナチスの中にも必死に抵抗をしようとした人物がいたということを知らせてくれる作品だと思いました。Mark数が少ないのは残念ですが、発掘良品にすべき映画と感じました。ドイツ軍の北アフリカ戦線において天才的な能力を発揮した元帥エルヴィン・ロンメルの生涯を描いた作品です。彼はヒトラー暗殺計画の共謀者として悲劇的な最期を迎えますが、果たしてその真相は?
彼の死を前提に、回想的に物語が進むのでそのあたりは『市民ケーン』を参考にしているのか。しかし、僕は『市民ケーン』より今作の方が数段響きました。何故なら、ナチスの将校に焦点をあてながらも、ヒトラーの狡猾さ、そして戦争の無意味さを伝えているからです。
エルヴィン・ロンメル元帥はドイツ内においても爆発的な人気を博していた模様。当初ヒトラーにも気に入られていましたが、その人気さから徐々にヒトラーは彼に脅威を感じていきます。どんな状況でも後退を許さないヒトラーの意見に対し、冷静な判断で異議申し立てをするロンメル。そこが気に食わなかったのか、本来暗殺計画に関与していたか定かではないロンメルを反逆者として自決を迫らせます。
確かにこのような歴史の展開はよくありそうですが、実際に緊迫した映像で見せられたらたまらない何かを感じます。本音とタテマエとはこのことです。みな、言葉を交わしながらも顔で真のメッセージを送っている模様。ロンメルは家族を人質に取られているようなものなので、選択肢は一つしかありませんでした。自軍で類い稀な活躍をした英雄を、その脅威から自軍で殺し、英雄として祀り立てる。人間て複雑な生き物です。ヒトラーの立場になると、民衆から人気になっている人物は本音はともかく、タテマエ上は最待遇で葬らなければならないといったところでしょう。そうすれば、民衆から反感も買わない、自分たちは安全になるという一石二鳥ぶり。故に狡猾です。
それにしても第二次世界大戦期、ヒトラーの暗殺計画が40回以上にも及んでいたのが衝撃的です。ゲシュタポの厳粛な統制により民衆の反乱は不可能だった故、ヒトラーを暗殺できるのは軍部の上層部の人たちくらいだけだったそうです。それでもこれ程暗殺計画が企てられたのは、ヒトラーの信頼度を測る上でも重要なデータです。ナチスとなれば全体的に悪いイメージが付着し、結果的に間違いはないですが、その中にも彼に反旗を翻そうとした人物がいたということは忘れてはいけないのかもしれません。
現に、今作で描かれた暗殺計画の首謀者シュタウフェンベルク大佐はドイツでは英雄とされているそうですし、ロンメルもそうです。
今作で最も感銘を受けたシーンは、ラストのロンメルが家族と別れるシーンです。二人とも心ではもう会えないとわかっているのにいつものように見送る。なんとも切なくて涙が出るシーンです。間違いなく名シーンです。
ヒトラー暗殺関連の作品として、最近の作品ならば未見ですが『ヒトラー暗殺、13分の誤算』がありますが、これも十分そのあたりを伝えている名作と思われます。序盤はそれほどですが、終盤、ヒトラーが出てきたあたりから一気にギアがかかります。興味のある方は是非。
しかし、ロンメルは「砂漠の狐」という異名を持っていたので、原題どおりで良かったのではと思えてしまいます。何故に鬼将軍?
あと余談ですが、今回の主人公エルヴィン・ロンメルのWikipediaの「生涯」の章が驚くほどに長い。こんな詳しい文Wikipediaで見たことがありません。多分プロが執筆してるのでは…