ハル

別離のハルのネタバレレビュー・内容・結末

別離(2011年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

夫婦の意見の食い違いによる離婚話はよくあると思う。映画にも身近にも。
だが、この映画はそれだけに視点を当てたものではない。
私はてっきり、それにスポットを当てて物語が進んでいくのかと思っていたから少し驚いたのだが、そのまま鑑賞を進めていった。


人は嘘を吐く生き物だ。
ここでも嘘は飛び交うのだが、それが自分のためではないものだから心を痛ませる。
娘のテルメーが父のために嘘を言い、車内で涙するシーンが特に辛かった。


話がごちゃごちゃになるのは、嘘のためだけではない。信仰しているもののためでもある。もし、介護の女性が宗教に入っていない無信心の人間なら、あのシーンで丸く収まったのだろうなと思うとやりきれない。


この話は別段、特別なものではないのだ。何処にでもあるような風景。だからこそ、より心が重くなる。苦しくなる。
子どもの射抜くような視線や涙が見ててとにかく心苦しかった。演技とは思えなかった。
演技とは思えないでいえば、アルツハイマーの老人もそうだ。


あの世界は本当に物語だったのか。そう思わせる。
きっと、似たようなことはあの国で起こってるのではないだろうか。

毎度思うのだが、この監督は見せ方が上手い。普通に作ろうとしたら単調になりそうなものを、上手く運んでいってる。
新作が楽しみ。
ハル

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