世界の映画祭で受賞も多く評価も高いという観る前の期待を、遥かに上回る完成度にまず驚いた。ものすごい見応え。
宗教観に強弱はあるものの、ジェンダー、経済格差、介護はどこにでもある問題。そして登場人物の細部にわたる描写と脚本に唸った。人としてのプライドと偏狭さ、家族のありかた、倫理観や正義感という国や人種を超えた機微は共感を呼び、それを老人から子役に至るまで出演した俳優たちの素晴らしい演技が支えている。
楽しそうに抱き合い満面の笑顔で遊んでいた2人の少女テルメーとソマイェ。なのにラスト近くでの互いを見るまなざしには胸が詰まった。
最後の瞬間まで惹きつけて離さない物語性、そしてラストをあの形で締めくくった才能。間をおかずアスガー・ファルハディ監督作を観たくなる、そんな映画だった。