ヒューマンドラマとサスペンスのバランスのとれた素晴らしい脚本。
この温度の低い落ち着いた物語を一級のエンターテイメントに仕上げたアスガー・ファルハディ監督に拍手!
始まりは些細な嘘から。
そこから負の連鎖が広がっていく。
本作に真の悪人は登場しない。
しかし、怒りの感情に支配された人間の一つ一つの小さな言動や行動が、すれ違いや軋轢を生み、事件は悪い方悪い方へと転がっていく。
初めから皆が真実を述べていればこんな結末にはならなかったはず。
現実でも、本作のような事例は世界のあちこちで生じているのだろう。
明日は我が身である。
一つだけ確かなのは、親の我儘に振り回される子供が一番不幸であるということだ。
ラストシーンの娘の涙が哀しい。
そして娘のような子供たちが、世界中に存在することがただただやるせない。
傑作の多いアカデミー外国語映画賞受賞作品の中でも、屈指の完成度を誇る本作。
間違いなく、観て損はない映画だ。
2015年6月5日 DVDにて二度目の鑑賞