インタビュアー「(この映画の製作を)放棄しようとは思わなかった?」
フランシス・F・コッポラ「自分自身だぞ。どうやって放棄する?」
○🚁フランシス・フォード・コッポラの代表作『地獄の黙示録』の製作過程を追ったドキュメンタリー映画。
○🌴そもそも「アポカリプス」と名のつく映画を撮っていた張本人が、その映画のせいで破滅しかかっていたというのが面白いです😁 邦題にかけて言えば、『地獄の黙示録』で誰よりも地獄を見たのはコッポラ自身だったというね……。
○🏚️題材になってる映画が、(言わせていただければ)異様な魅力は放ってるけど傑作と呼ぶのはちょっと躊躇われる完成度……なところが最高なのかなと。すったもんだの製作中のトラブルが映画そのものとシンクロしてくる感じすらある。
○🎞️単純にドキュメンタリーとしても、素材が豊富で贅沢な作品だなーと。コッポラ監督への複数のインタビューを中心に、妻エレノアが撮っていた現地のドキュメンタリー映像、彼女の音声日記?、夫たるフランシスとの私的な会話、『Apocalypse Now は完成しないんじゃね?』的なアメリカ本国でのゴシップ報道などなど。何より撮影の裏側の映像もふんだんで、そのへん観てるだけで楽しい。金のかかった映画は撮影風景すらスペクタクル……。
これは1992年公開なのですが、のちの『特別完全版』(2001)や『ファイナル・カット版』(2020)で観ることのできるプレイメイトとの後日談や仏人プランテーションのシーンなどはこの作品が初お目見えだったのかな? このドキュメンタリーがのちの別バージョン公開のきっかけになったのかもしれません。
ともかく、語り口のタイプが複数あるおかげでノンフィクションのわりには展開にかなり波があって楽しい! コッポラの同僚かつ盟友であるジョージ・ルーカスも登場します。
○🌪️でもやっぱり一番の楽しみはコッポラ&『地獄の黙示録』を襲うかずかずのトラブル! 台風によるセットの破壊といった天災もあるんだけどそちらは2割ぐらいで、あとの8割はもっぱら人災。ベトナムを避けて選んだフィリピンも当時は内戦が起きていて、金を積んで借りたはずのヘリがロケ中に本物の戦争に駆り出されてどっか行っちゃう。撮影が長引き資金繰りも困難になり、コッポラは全財産をつぎ込む。役者陣にもいろいろ問題が起こる。でもそれ以上に強調されているのが、他ならぬコッポラ自身の強烈な芸術志向という感じで、作品を高めるためのあれやこれやの試行錯誤がどんどん商業作品としての映画製作から遠ざからせ、自分自身の首を絞めるという……。でも彼自身は苦しみながらも正しいと思って恬然としてるし、奥さんのエレノアはわりとその綱渡りを楽しんでるので結果オーライなのかな。
○🤯とどめのマーロン・ブランド! マーティン・シーン演じるウィラード大尉にとってのカーツ大佐よりも、コッポラ監督にとってのマーロン・ブランドのほうが確実にラスボスだったような。こんだけ大役で出演していて、これほど後からおおっぴらにクソ味噌に言われてる役者は他にいないのでは……。作中のカーツ大佐って正直自分には何を言ってるのか分からなかったのですが、これを観ると「そりゃ分かるわけねぇわなぁ……」という気持ちになりました^ ^ そのへんの秘密?が明かされるのもいいとこ。
○📖コッポラは自身で脚本も書く人なので、現地でロケしながらひらめいたアイデアを次々作品に投入していったようです。ラストもあとからまとめたっぽいし。だからああいう数珠繋ぎみたいな構成の映画なのかーという気もするけど、作り始めたあとで脚本に大きく手を入れるのはたぶん危険な綱渡りになりがち……。
○🌳題名の『ハート・オブ・ダークネス』って原作の『闇の奥』から取ってるんだけど、これはもうこの映画の製作自体がコッポラにとって出口の見えない闇の奥地への旅だった……っていう直球のネーミングよね(でも英語圏では『闇の心臓』だからニュアンス違うのかな)
○🎨実際はちょっと違う気もするけど、この映画を観る限りではコッポラという人は、現実よりも断然!作品のほうを優先する破滅型の芸術家という感じがします。そんな彼が『ゴッドファーザー』の興行的な成功によって大金を得たことで生まれた悲喜劇が『地獄の黙示録』という感じ? 『ホドロフスキーのDUNE』と同じで、職業的な映画作家になるための教材にはぜ~んぜんならなそうなのですが😄、有り体に言ってひとつのことに全てを捧げてる人間のドラマが面白くないわけないよな~という感じでした。『地獄の黙示録』が好きだった方はぜひ!
○🌆おもしろいにせよつまらないにせよ、『メガロポリス』が今からめっちゃ楽しみです。早く公開しないかな🌃