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キャスト・アウェイのzomychanのネタバレレビュー・内容・結末

キャスト・アウェイ(2000年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

バレーボールに顔を描き、話しかけ、ウィルソンと名付けた時点で、やっぱり人間に孤独は克服できないのだなぁ、と思った。
時間にうるさかった主人公が島でのサバイバル生活を経て時間に対する考え方がどう変わったのか、もう少し具体的に描かれるかと思っていたけれど、そうでもなかった気がする。

島に取り残されたことの一番の絶望は、ただ死ぬまで一人で生きるしかないということだったのではないかと思う。時計やカレンダーで整理される「〇時まで」といった締め切りや「大晦日には帰る」といった区切りはなく、人間として生存するための行為を除いては時間が過ぎるのを一人で待つばかりであることが、どれだけ苦痛かを感じさせた。ただ、壊れた時計の中に収められた彼女の写真だけが生きがいだったのかも知れない。本編では無人島に辿り着いてから離れるまでの描写をかなり丁寧にしており、鑑賞者としてはドラマチックなことがあまり起こらないなーとも正直思った。だが、何かドラマチックなことが起こるのを他者に期待せず、単純に生存・存在するための活動をし続けるのは、人間にとって最も難しいことなのかもしれないとも感じられた。キャストアウェイを見て影響されたのか、無意識に神谷美恵子の「生きがいについて」を本屋で購入して読んでいる。幸福感や使命感など似てはいるが異なる概念にも触れられて、深掘り中だ。

遭難した当時の恋人は、自分が島での生活を送っている間別の人と結婚し、帰ってくるころには子どもも育てていた。「私は生きていると信じていた」と彼女がいうようなシーンで、「周りに諦めるよう言われて…」云々の部分はモヤっとした。自分の人生といえど、自分の体も時間も自分だけのものではないし、全てのことを自分で決められるわけじゃない。自分で選択できることはほんのわずかしかないようにも思えてくる。二人とも最後に正直になったあとに、お互いのかつて想定していなかった現実に戻っていくのが救いっちゃ救いだったのかもしれない。

サバイバル生活中に漂流してきたFedExの荷物の中でも、なぜ黄色い羽が描かれた箱が彼にとって希望になったのかは気になる。
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