しょしょしょ

自転車泥棒のしょしょしょのレビュー・感想・評価

自転車泥棒(1948年製作の映画)
4.0
輪を成すタイヤのように抜け出せない連鎖を繰り返していても、関わりのない場所でペダルは漕がれていて、タイヤは少しずつ前に進んでいる。でもほとんどの弱い立場はタイヤで、同じ状況をぐるぐると回り、少数の選ばれた者だけがハンドルを握り高い場所から先を見据えて進んでいる事を知っている。タイヤは地を回ることしかできない。戦後まもない街ではそれがむき出しで生々しく映る。1台の自転車の重み、それは命と同じ。

今の時代になっても根本的には変わらなくて、目的地が分かっているのはほんの一部の上の人間で、ハンドルを握っているのはその周辺の人間だけ。あとのほとんどの人は毎日を繰り返し必死にサドルを漕いでいる。どこへ向かっているのかも分からぬ不安を抱えたまま。ただタイヤを前に進めるしかない。目的地くらいハッキリさせてくれよな。
でも自転車の重さはだいぶ変わったかな。

このへんの時代の映画及び文学をイタリアンネオリアリズムと呼ぶらしい。

2021.107
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