カタパルトスープレックス

子供の四季 春夏(はるなつ)の巻のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

3.8
清水宏監督が得意とした子供の強さと弱さを描いたジュブナイル映画『風の中の子供』(1937年)の続編です。今回は二本立てで、前編が本作「春夏」で、後編が「秋冬」となります。

1939年の作品ですので、日独伊三国同盟の締結の頃の作品となります。太平洋戦争突入間近。前作『風の中の子供』で会社は立て直しができたと思ったのですが、父親は具合が悪くなってしまい、借金が増えてしまっているようです。善太・三平兄弟はそんな大人の事情に振り回されず、大自然を駆け抜けます。

本作「春夏」は子供の指揮の中でも明るい時代。まだ希望のある時代です。子供たちがいる風景。それがただ眩しい。しかし、子供の時代にも「秋冬」がくる。最後はそんな終わりかたです。

本作「春夏」も次作「秋冬」も唐突に終わります。なぜかというと、最後のリールが現存していないからです。「春夏」のシナリオによれば父の見舞いの帰りに善太と三平が軍歌を歌って帰るのだそうです。まあ、そういう時代でしたからね。GHQの検閲のためとも言われているそうですが、現在残っているのは完全版ではない。なので、なんとも評価のし難い作品にはなっています。

ただ、清水宏監督の真骨頂は自然と子供を題材とした美しい風景なんだとは思います。だから、活動写真として見ればやはりいい作品ということになる。