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レマゲン鉄橋のmagic227のレビュー・感想・評価

レマゲン鉄橋(1968年製作の映画)
4.3
ジョン・ギラーミンという監督は特徴の掴み辛い人で、この監督ならではという型が見当たりません。そのかわり「タワーリング・インフェルノ」も「キングコング」も「ナイル殺人事件」も70年代の大作映画というと必ずジョン・ギラーミンというイメージがあるのです。恐らく手堅くてマネジメント能力も高い、100点は取らなくても必ず70点以上はキープする、そんなタイプだったのでしょう。しかし、もちろん作家性が無い訳ではありません。この「レマゲン鉄橋」は大作戦争映画でありながらもジョン・ギラーミンの特色が良く出ている作品だと思います。第二次世界大戦末期、敗走を続けるドイツ軍は連合軍の進撃を遅らせるために、ドイツ国境のライン川に架かる橋を片っ端から破壊していきますが、実はライン川の向こうには傷つき疲れて母国に撤退しようとしているドイツ軍部隊がたくさん残っています。橋を落とせば数万のドイツ軍は連合軍を前に孤立してしまうのです。映画はライン川に架かる最後の橋レマゲン鉄橋を舞台に、橋を奪うために限界を超えて急進撃する連合軍部隊の中尉と、援軍はおろか満足に武器すら無い中で、一人でも多くのドイツ兵を撤退させるため爆破命令を無視して橋を守ろうとするドイツ軍司令官を交互に描いていきます。ギラーミン監督は連合軍とドイツ軍を公平な目で捉え、疾走する大戦車隊や砲撃で崩れ落ちる街並みなど迫力満点の戦闘シーンを描きながらも、その向こう側にチラチラと「人間が人間を人間とも思わない」戦争が持つ非人間性を織り込んでいきます。もちろんこの時代に、これだけスターを揃えたビッグバジェット・ムービーで大っぴらに反戦映画など作れる訳も無いのですが、観客は連合軍の視点で映画を観ながら、いつしか橋を守るドイツ軍にシンパシーを感じてしまいます。主人公が拾ったシガレットケースからタバコを吸うラストシーンはそんなギラーミンのメッセージが埋め込まれた名場面となっています。大作映画ばかりを撮ってきたジョン・ギラーミンのちょっと変わった戦争映画、たまにはこんな作品を観て見るのはどうでしょう。
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