Shelby

火垂るの墓のShelbyのレビュー・感想・評価

火垂るの墓(1988年製作の映画)
3.4
今までロードショーで放映されてきていても、意識的に見ないようにしてきた。勿論観たことはあるのだけれど、必ずと言っていいほど号泣する。子供ながらに悲しく辛い映画だと覚えていたこともあったが、大人になって、見えてくるものはまた違うものだった。
清太も、まだ子供なのに。節子を第一に考える清太にまた泣けてくる。
親が亡くなり、家もない、仮住まいの家ですら、居候のため肩身が狭い。そんな状態で、清太が子供に戻れる場所がない。節子のためにしっかりしないと、頑張る姿に胸を打たれる。

いつ観たって胸が苦しくなるのだ。人の温かみだとか、優しさだとか、この作品では伝わってこない。助け合いなんて、ないのではないかと思わされるほどの圧迫感。この作品が持つ重みは計り知れない。

母の死でも、父の生存の可能性をしっても、泣かなかった清太。きっと全て、節子のため。ある意味、節子がいたから頑張れた。そして節子が居たから生きている意味があったのだと思う。最後の心の支えである節子の死により、ポキリと折れてしまった清太。

駅で転がる今にも死に絶えそうな子供たちを、ゴミの如く扱う駅員たち。
いくらこんな時代だからといって、それは無いだろうなんて愕然としていた。
しかし、ふと思い返してみれば、駅員とまではいかないが、清太を横目に通り過ぎる通行人と私達も同じことを、現代でもしているではないか。
そう思うと、戦時中も、現代も、そう変わらない。見ないふりをする無関心さを責められているような気がして、ならなかった。

こんなにも、後世に残る作品を世に送り出して頂いたこと、心より感謝致します。
監督のご冥福を、お祈りします。
Shelby

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