ミシンそば

ハリー、見知らぬ友人のミシンそばのレビュー・感想・評価

ハリー、見知らぬ友人(2000年製作の映画)
4.0
キッショ。なんでそこまで出来るんだよ。

フランス映画にはヴァカンス映画って多いですよね。
山に行ったり海に行ったり川に行ったり、そんなヴァカンス映画と言うジャンルに声高に物申す、ドミニク・モル監督の長編二作目(当然のように日本初紹介)。

車の暑さやら、娘らの癇癪やらで開始早々から主人公ミシェルの周りには苛立ち由来の嫌な空気がずっと渦を巻いている。
そこに滑り込んできたのが、高校の同級生と言うハリー。
ミシェルは勿論のこと家族に対しても親切で、自分とガールフレンドの予定を曲げてでもミシェルらに良くしてくれる。
だが、車を買ってポン☆とくれた辺りから、流石にどんな人でもコイツおかしい…ってなる。
ハリーの暴走じみた行動は次第にエスカレートし、さらに最初のサービスエリアからずっと漂っていた嫌な空気もドンドン濃くなる。

昔誰かが言っていたが、サイコパスが他人を慮る時と言うのは、その他者を自分の分身と見なした時だ、と言うのがこの映画を観てて頭をよぎった。
ハリーがミシェルの詩(と、事実上の短編小説)に並々ならぬ執着を見せていたのは分かるし、ハリーからしたら本心からの献身なんだろう。
だが言ってみればハリーの善意とやらは手前勝手な押し付けで、いかにもサイコパスと言った趣き。
結構期待度高めで、例によってTSUTAYAに取り寄せてもらった作品だったが、予想通りのキショさと不穏さを味わえて満足した(もう一回観たいとかは思わないが)。