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ひろしまのpanのレビュー・感想・評価

ひろしま(1953年製作の映画)
4.0
原爆投下の7年後に制作された作品とのこと。
出演者も被曝経験者多数で、作品中に使われている物品も当時のものらしいです。
広島近辺で生まれたので、学校でも否応なしにこの手の作品は見せられたものですが、これは知りませんでした。
憎悪を煽るとか、反米色が強いとかの理由でお蔵入りされたとか。

「多くの市民が熱線で焼かれた」という一言でいつも片付けられているのが納得いかなったのですが、その前と、その後と、もっとその後をリアルになぞっていて悲しく恐ろしかったです。

作中、工場を辞めた青年が出てくるのですが、その理由が「だってこのごろ工場で鉄砲の玉を作っているんですよ。僕はそんなもの作りたくありません、またこんな事が起こるんじゃないですか。市民が大勢こんな目に遭うのではありませんか」と言って、防空壕から掘り出し、外国人観光客に売っていた白骨をゆび指すのです。

被曝して生き残った人間は、自分を売り物にするか、原爆乙女のように憐れみを受けるか、ケロイドを隠して悪い事をしたかのようにこそこそ生きるか、いつ原爆症で死ぬのかと怯えるかで、とにかくずっと地獄が続くのですが世界中というより、同じ日本に住んでいる人間にさえまったく理解されないという暗黒世界。
原爆投下から7年後の作品にしてこれです。

武器製造販売や戦争は儲かるかもしれないけれど、こんな苦痛の上の富や繁栄とはいかなるものか。
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