匿名

エスターの匿名のネタバレレビュー・内容・結末

エスター(2009年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

養子として迎えた少女の本来の姿は、発育不全によって成長が止まった大人の女だった、という話。
ホラーが非常に苦手だが、予告で内容がとても気になっていたので視聴。
結論から言うとホラー描写は過激すぎず、程よい緊張感と恐怖感で楽しく視聴できた。

物語後半までエスターは"不気味で恐ろしい子ども"として描かれていて、彼女がケイトを挑発し、ジョンを欺き、マックスを脅迫するたび、なぜ彼女はこんなことをする少女になってしまったのだろうというところがずっと気がかりだった。
蓋を開けてみれば彼女は障害を患った成人女性で、ジョンとの性的交渉を狙った非常に狡猾で計画的な犯行だったことが発覚。
気付いたのはケイトのみで、その頃にはジョンは殺害され、子どもたちも危機に瀕していた。

この作品のホラー要素として、エスターの奇怪さはもちろんだが、人間関係の歪さや脆さも十分な恐怖があると感じた。
アルコール依存性の過去を持つケイトは、エスターの危険性を訴えてもジョンからの信頼を勝ち取ることができず、その信頼関係の危うさを上手くエスターに利用されケイトの信用は地に落ちてしまう。(ワインボトルのシーン)
エスターの猟奇的な恐怖を目的に視聴している人には上記のような場面は歯痒く、或いはイライラしたりジョンを非難するかもしれない。
理解してもらえないケイトの不安や不満と、信用しきれないジョンの危うい信頼関係は、エスターの恐ろしさのひとつであり、この作品の重要なメッセージにも感じた。

エスターはただ"恐ろしい殺人鬼であり、制裁されるべき悪人"であるのかというとそうではなく、彼女の発育障害は同情の余地がある悲しい境遇だと感じる。
発育障害のせいで一般的な幸福を得ることができず、とりわけ肉体関係における執着が強いことにも一定の納得ができる。
ケイトがエスターを湖に沈め保護される形で物語は幕を閉じたが、安心感はあれど一抹の切なさも同時に感じたのはエスターへの同情や哀れみの感情を持っていたからだろう。
この手の視聴後のモヤモヤはとても好きな部類なので、エスターに思いを馳せながら面白さを噛み締めることができた。

エスター役のイザベル・ファーマンの怪演は見事のひとことで、本当に中には33歳のリーナが存在するのではないか?と思わずにはいられなかった。
彼女を見るためにこの作品を視聴しても損はしないと言っても過言ではないかも。(個人差あり)

アートワークの左右対称なエスターは、本作の不気味さやエスターの猟奇さを巧みに表現ていて本当に素晴らしい。
このアートワークとコピーをひと目見ただけで気になっていたので、広告的フックとして非常に成功していると思う。

原題の" Orphan(孤児)"は、確かに風評被害すごそうでちょっと笑った。
匿名

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