このレビューはネタバレを含みます
"どうやら人種差別的な題材のようだ"という曖昧な印象だけで事前知識は全くない状態で視聴。
ホラーとひと口に言うにはどこか違い、独特の緊張感が楽しめて非常に面白かった。
始終薄ぼんやりと不気味な雰囲気が漂っていて、言いようのない居心地の悪さを感じる。
直接差別的な目線や言葉を向けられているわけではないのに、クリスへの好奇にも見える目はむしろ強い差別を含んでいて、とても生々しい。
だからといってずっと重苦しいかといえばそうではなく、序盤に展開されるジョークやロッドの存在のおかげで明るいシーンも随所に見られる。その明るさが相乗効果的に気味の悪さを際立てていて、全く退屈しなかった。
伏線も丁寧かつ自然で面白い。
細かいところだがジョージナが「チクる」を「告げ口」と咀嚼するまで理解できなかった場面も、中身はおばあちゃんだったことを考えると納得できる、振り返ると非常に意味のあるシーンだと思う。
登場人物全員の演技が素晴らしくて、それが伏線の自然さや差別のリアリティに繋がっていると感じた。
ジョージナの泣き演技はしばらく忘れられないだろう。
特筆するほどではないけど、強いて今ひとつに感じた部分を挙げるなら、動機・目的・手段・伏線の全てが作中で綺麗に説明されすぎていて、視聴後に後味の悪さが全くなくなってしまった点。
特に余韻などもなく「大変な目にあったね、でも無事に生還できてよかったね」で片付いてしまうことが少しだけ残念に感じた。
もちろん作品のメッセージはそれだけではないが、人種差別的観点の余韻よりも、クリスのお話としては"猟奇的事件が無事に終わった感"で締めくくられているため、こちらの印象が強く残ってしまったということなのかもしれない。
最後にクリスが一家を皆殺しにして脱出する場面も、クリスが強すぎてこれもある種の風刺か？と余計に勘繰ってしまう。
時間を置いて何度か観たい作品。
