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ローマ法王の休日のakymrossoのレビュー・感想・評価

ローマ法王の休日(2011年製作の映画)
4.2
端的に言えば風刺劇。法王庁から群衆までその対象は様々です。コミカルな部分もありますが、あまりコメディとかハートウォーミングを期待をして見ない方がいいかと。飽くまでもナンニ・モレッティ。作中に出てきますが、チェーホフの戯曲「かもめ(チャイカ)」がキーポイントになっていて、そうして見ると逃避以外の確固たる目的もなく当て所なくローマの街を彷徨う法王の姿は海風に乗るかもめにも似ていて、軽やかさがあると同時に頼りなくもあり、解放と翻弄の合間を漂うその背中はどこか寂し気に映ります。自分が型に嵌りつつあることへの迷いや恐れ、何かのきっかけでそれを自覚することの唐突さ、心の底の挫折感と孤独感、周囲とのギャップなどなど、淡々として控えめに表現されますが、しんしんと降り積もるように観客に訴えかけてきます。作中に出ていたかどうか覚えていませんが、「君は自分の道を見つけて、行く先を知っているんだね。僕は妄想と幻影の混沌の中を彷徨って、一体それが何の、誰のために必要なのかわからずにいる。信念を持てず、何が自分の使命なのかもわからずにいる」とは「かもめ」の主人公トレープレフの言葉。あのラストは確かに是非が分かれるとは思いますが、私個人は肯定的です。ある視点では信念や勇気と捉えることができるし、また極端な見方をすれば「かもめ」のトレープレフのラストにシンクロさせることも可能かと。まぁ偏った見方かもしれないですが。なんにせよジジイ萌えには最適の映画でした。
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