脚本の構成がすごい。
これだけ視点が頻繁に変わると、だいたいは見づらくなるけど、この作品はそんなことはない。
それぞれの視点がどこかにつながっている。
ひとつ、ぞっとしたシーンの話。
黒人の映像監督であるキャメロンは、とあるシーンの撮影中、白人の同僚に話があると言われる。
曰く、「黒人の役者の話しかたが黒人らしくない。直したほうがよくないか?」と。まるでこともなげに。
このシーンの恐ろしいところは、キャメロンはこの白人が言う、”黒人らしくない”話しかたをする人、というところ。
白人が思うステレオタイプな黒人像を役に押しつけておきながら、では目の前にいるキャメロンはいったい彼にとってなんなんだろうか?
空恐ろしくなってしまった。
深く深く、人種差別意識が根づいていることがわかるシーンだった。
アメリカは人種の坩堝と言うけど、表面的にはそう見えない人でも、深層の部分で差別意識があったりするのかもしれない。
もしルーツが同じ人種同士であったら、あの人物はあの行動を取っただろうか? と考えてしまう。あまりに根深い人種差別問題、アメリカ社会の歪みと言える。