しばいぬたろう

慕情のしばいぬたろうのネタバレレビュー・内容・結末

慕情(1955年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

『慕情』('55)
Love Is a Many-Splendored Thing / アメリカ合衆国 / 英語、中国語


有名な作品であり、自伝的小説を原作とする作品だが、あまり中身の無い作品でした。
壮大な音楽と、冒頭の映像(空から香港の街並みをワンカットで撮影している)は印象的で良かった。


1949年、イギリス領香港。
中国人の父親とイギリス人の母親を持つ研修医のハン・スーインは、あるパーティで特派員のマーク・エリオットと知り合う。
マークはすぐにスーインに心を奪われ、スーインもマークに好感を持つ。
しかしマークには妻がおり、スーインも寡婦でハーフであることを引け目に感じていた。


化粧のせいか、ジェニファー・ジョーンズは彫りの深い中国人に見えなくもないため、設定に違和感を感じなかった。
英国に対する愛国心はあまりないものの、中国に対して絶大な愛国心を持つ主人公。
それは別にいいのだが、「外国人が中国に住むことが難しい」の答えで、あっさり「それならアメリカに住めばいいわ」と発言したことは違和感だった。
これまでずっと中国に対する愛情を聞かされていたので、あまりのあっさりさに拍子抜けした。

寡婦と妻帯者の恋物語ということで、大人の恋愛模様を展開していくかと思いきや、意味の無い駆け引きばかりで、女性のおすまし具合が気になって仕方がない。
かと思いきや、片時も離れたくないラブラブ感やら少女の様に電話にはしゃいでみたりと、主軸がよくわからない。
男の妻も登場せず、主人公の女学校時代の友達が妻だったら面白い展開になっていた気がする。

男も女も胡散臭く感じたため、全然感情移入ができず、物語に入り込むことができなかった。
文学的発言が多いのだが、前述のとおり物語に入り込めないことから心に響かず、展開をのっぺりさせただけだった。

個人的にはタイトルがよくわからない。
「慕情」とは、「慕わしく思う気持ち」「異性を恋い慕うこと」のことだが、本作の「慕情」は男の気持ちだろうか。
主人公女性を見ている限りでは、「ツンデレ」というタイトルが一番合っているような気がしました。
男と相対する時は気のないフリやクールな私を演じているが、それ以外の時は割とデレてるという完璧なツンデレ主人公でした。
そもそも「慕情」という言葉では「上品な恋」という印象を受けるが、中身は泥沼不倫物語です。
ハーフであることで職を失する主人公だが、理由は絶対不倫問題としか思えない。
それとも、引き取った孤児の少女に対する主人公の気持ちなのだろうか。

イラっとするタイプのパーマー・ジョーンズ夫人だったが、不倫に対して忠告するという作品内でも数少ない常識人でした。
しばいぬたろう

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