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父親たちの星条旗のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

父親たちの星条旗(2006年製作の映画)
3.5
ジェームズ・ブラッドリーとロン・パワーズによる同名ノンフィクション小説(邦題:「硫黄島の星条旗」)をクリント・イーストウッド監督が映画化。
太平洋戦争における激戦「硫黄島の戦い」を日米双方の視点から描いた「硫黄島二部作」の一作目(二作目は日本側からの視点「硫黄島からの手紙」)。
硫黄島の山頂に星条旗を打ち立てる有名な写真「硫黄島の星条旗」(Raising the Flag on Iwojima、1945.2.23従軍カメラマンのジョー・ローゼンタールが撮影)で英雄視された兵士3人の激戦地での体験とその後の人生を描く。
なお、小笠原諸島南端にある硫黄島(念のため日本の領土です)の読み方は「いおうとう」だが、アメリカ側は「イオウジマ」と呼んでいる(富士山を以前フジヤマの呼んだようなイメージ)。
制作はスピルバーグのドリームワークス。
原題: Flags of Our Fathers (2006)

太平洋戦争中、硫黄島に上陸した米軍の兵士6人が摺鉢山の頂上に星条旗を掲げる姿を撮影した写真が、米国国民を熱狂させる。
そのうち生き残った3人の若者ドク、アイラ、レイニーは、英雄として熱狂的に迎えられ、戦時国債購入キャンペーンの広告塔として全国をまわることに。
だが、戦地で亡くなった戦友を思い、3人はそれぞれ苦悩する…。

「大抵の奴は、そこで何が起こったかを話したがらない。多分、忘れようとしているからだろう」
"Most guys I knew would never talk about what happened over there. Probably because they're still trying to forget about it."

「戦争を知った気でいる奴は愚かだ。特に、戦場を知らない者たちに多い。皆、単純に考えたがる。"善対悪"、"ヒーロー対悪者"。どちらも大勢いる。だが、実際には我々が思うようなものではない」

「私が知る者は皆、あの戦場の話を嫌った。忘れたかったんだろう。彼らは自分を英雄とは思っていなかった。多くは栄光と無縁に散り、戦場での写真もない。見ていたのは仲間だけ。遺族には国のため死んだと。本当はどうだか」

「戦争で見られるのは、想像を絶絶するほど残虐な行為だ。だが、正当化しないと。それには言葉より分かりやすい”真実”が必要だ」

「ただし、我々を"硫黄島の英雄"と呼ぶのは間違いです。本当の英雄は島で死んだ仲間たちです」

「英雄なんていないんだ。英雄は人間が必要にかられて作るものだ。でもそうしないと、命を犠牲にする行為は理解しがたいからだ。だが、父と父と仲間たちが危険を冒し傷を負ったのは、仲間のためだった。国のための戦いでも、死ぬのは友のため、共に戦った男たちのためだ。彼らの栄誉を讃えたいなら、ありのままの姿を心に留めよう」
"There are no such things as heroes…
Heroes are something we create, something we need.”

"If we wish to truly honor these men we should remember them the way they really were."

【第二小隊の8人のうち、生き残った3人(戦費調達キャンペーンに駆り出される)】
・※ジョン・“ドク”・ブラッドリー (※ライアン・フィリップ):葬儀屋になる。
・※アイラ・ヘイズ(※アダム・ビーチ):ネイティブ・アメリカン。アルコール依存性に陥る。小作農として働く。
・伝令であった※レイニー・ギャグノン(※ジェシー・ブラッドフォード):用務員として働く。

【第二小隊の8人のうち、戦死した5人】
・ マイケル/"マイク"・ストランク三等軍曹(バリー・ペッパー):第二小隊の指揮を担当。味方(米海軍)の砲弾に見舞われ死亡。
・ラルフ・“イギー”・イグナトウスキー一等兵( ジェイミー・ベル):地下壕に引きずり込まれ、日本兵に拷問のうえ虐殺される。
・ヘンリー・ハンク・ハンセン軍曹( ポール・ウォーカー)
・※ハーロン・ブロック伍長( ベンジャミン・ウォーカー):機関銃射撃で戦死。
・フランクリン・スースリー(ジョセフ・クロス):機関銃射撃で戦死。

有名なローゼンタールの写真に写っている旗は差し替えられたもので、写っている人も違う。
海軍長官のジェームズ・フォレスタルが旗を欲しがったため、別な旗に差し替えられたためだ。
参考までに以下に記載しておく。
※は、映画に登場する第二小隊8人のうち、どちらかの写真に写っている人物

【ローゼンタールの写真「硫黄島の星条旗」の6人(2019年10月までの訂正後)】
・※ハーロン・ブロック伍長 (戦死) ( ※ベンジャミン・ウォーカー)
・実は、ハロルド・ケラー一等兵 ←※レニー・ギャグノン 一等兵(※ジェシー・ブラッドフォード)から修正される。
・※フランクリン・スースリー一等兵 (戦死)(※ジョセフ・クロス)
・※マイケル/"マイク"・ストランク三等軍曹 (戦死)(※バリー・ペッパー)
 ・実は、ハロルド・シュルツ一等兵 ←※ジョン・“ドク”・ブラッドリー (※ライアン・フィリップ)から修正される。
・※ アイラ・ヘイズ一等兵 (※アダム・ビーチ)

【最初の星条旗掲揚 の8人(撮影はルイス・ロウェリー)】
・ハロルド・G・シュリエ中尉
・レイモンド・ジェイコブス上等兵:無線通信士
・※ヘンリー ・ハンク・ハンセン軍曹( ※ポール・ウォーカー):2度目の掲揚写真に写っていたと誤解された人物
・フィル・ワード二等兵
・アーネスト・ブーツ・トーマス二等曹長
・※ジョン・“ドク”・ブラッドリー二等衛生兵 (※ライアン・フィリップ):2度目の掲揚写真に写っていたと誤解された人物
・ジェームズ・ミシェルズ一等兵
・チャールズ・リンドバーグ伍長

つまり、生き残った3人のうちアイラだけが二枚目の旗の写真に写っていて、ドクとレイニーは最初に旗を揚げたがその写真には写っていなかったということだ。

若い時からアンチ・ヒーローを俳優として演じてきたクリント・イーストウッドは、監督として本当のヒーロー像とは何かをテーマに撮り続けている。
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