まりりんクイン

理由のまりりんクインのレビュー・感想・評価

理由(2004年製作の映画)
3.8
以外とイマイチな人が多いんですね…ビックリ

宮部みゆき原作のミステリー小説を、大林宣彦監督が映画化。

原作は、ある高級マンションで起きた一家惨殺事件を、事件関係者やその周辺人物の衝撃をルポルタージュ風に纏めてあり、いわばモキュメンタリー小説って感じなんですが、

本作はそんな原作の構成を、そっくりそのまんま再現するという実験的な手法で撮られています。そのまんま再現、といっても、モキュメンタリーとして撮るのではなく、あくまで映画的に、登場人物達がスクリーンに向かって語りかけるという、大林節全開で再現していくのですから、もう観たことない感じになってます笑

冒頭、ひたすら荒川区の歴史を説明するテロップが延々と流れ出し(マジで長い)、一体これからなにが始まるんやと思っていると、強烈な空のモンタージュがぶち込まれ→明らかにセットの交番の中で、信じられないくらい台詞口調のやりとりが、信じられないくらい目まぐるしいカット割りで繰り広げられる。
ああ大林映画が始まるんだなという感じ笑

まだ新人の多部未華子(キャストのクレジットに「新人」て書いてある)や、宮崎あおいが兄妹で出てたり、立川談志、大山のぶ代が出てたりと、信じられないくらい豪華なキャストがエキストラレベルの出番で消化されていくスピード感にクラクラします。

冒頭の「荒川区の歴史」からかましてますが、後に「この空の花」で炸裂するテロップ芸も、この頃から使用していますね。
延々とあらゆる情報がテロップで出てくるからこそ、最後の最後に出てくる言葉がぐさりと刺さります…怖い…

また映画全体がそのスピード感で駆け抜けても、上映時間160分という長さ…まあ疲れます笑

確かにお話の面白さ、語り口の面白さ的には、原作の方がやはり優っているかもしれません。


しかしラスト、凄まじいテンポとカット割りのインタビューと再現劇映像で紡がれてきたこの物語が、遂に真実に辿りつく。
(マジでここまでか死ぬかと思うくらい長い)
事件解決の鍵となるシーン。

ある使命を帯びて、下町の民宿の娘である寺島咲さんが交番へ向かって走り出す。

このシーンだけはカットを激しく割らずじっくりと見せていく。
一気に音楽が盛り上がる中、夕暮れに染まった東京の下町を駆け抜けていく寺島咲さん。
そして冒頭の交番のシーンへと円環的につながる。

このシーンの美しさ、
寺島さんの少女的魅力、
この長い長い物語が一つに繋がり、終わりを迎える瞬間の気持ち良さ。

言いようのない感動が、
「映画ってすげえ…」
としか言いようのない感動が押し寄せてきます。
大林作品はこのカタルシスがあるからやめられませんね…
ラストのおどろおどろしさにもギョッとします。

DVDの特典、大林監督自らのナレーション付きメイキング「理由が作られた理由」も超面白いです。
なんでしょうか大林監督の声と語りの説得力は…
やっぱりこの人バケモンだ…
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