矢吹

貸間ありの矢吹のレビュー・感想・評価

貸間あり(1959年製作の映画)
3.8
なんか、めちゃくちゃ変な映画じゃなかった?
川島雄三さんを好きかもしれないとずっと思ってて、まだ全然作品数見てないけど、なんか、全部見切っても、好きかもしれないのままで、一生好きなままな気がしてきた。
好きになったら嫌いになるかもしれないけど、好きかもしれなかったら一生好きかもしれないよね。これは関係ない話なんだけど。
いや、好きじゃないわって気づくだけか。これは関係ない話なんだけど。
つまり、川島雄三という男の人をどんどん知りたくなる気がするのだ。
それってなんか!かっこよくない?
俺もそんなふうに思われたいかも。
いまだ、アダルトな大人のやらしいエッチな感じがしている。ふざけた野郎感といいましょうか。

さよならだけが人生だ。
さよならだけが人生ならば。
償いだけが人生なんだから。

音楽がすごく不気味であった。
日常系のコメディでしたけんど、めちゃくちゃコメディでしたけんども、全然明るくない音楽で、常に生活の闇が微かにどこかにまとわりつく感じ。

コントっぽいロングショットと、奥行き使ったドタバタコメディが9割9分だったなかで、
お千代さんの独唱の単独のアップのショットの美しさと儚さはとんでもなかったです。こういうとこに続いてるのか。
なにせ、ちゃんと悲劇的な結末も、全員分の一つの締めくくりではなく、それぞれの人生の中で起きた事件の一つにすぎないものとして残っているのが、なんとも、捉えどころが多い物語といいますか。
変な映画だな。って感じはしている。
一つの屋根の下での群像劇で、ある種、主役は一個の家でもあるという具合。
猫と保険金の話も、ブラック過ぎて、食卓には、人生には、突然訪れるもので、みんな別に、続きを生きる。当たり前に、当たり前のように生きる。当たり前な話。
あと、作品の中で人と人の交渉の際の、片方が粘る時間が長くて、リアル過ぎて、一試合の攻防のラリーがめっちゃ多くて笑っちゃう。いらない人からしたらいらないんだろうけど、ちゃんとしてるなあ。って。
こういうちょっとしたシミがなんかおしゃれに、綺麗に、見えるほどに、終始、筋と動きはコメディ全開でとても楽しい軽快な映画だったっちゅう、話!

フランキー堺さん、ごろうさんは、もちろん、全キャラおかしいんだけど、受験生が特によかったな。ちょうど仲良くなりたくないタイプで。

井伏鱒二の原作、そろそろ読むか。
花に嵐の、ばっかり口ずさんでいるから。
また来る春、は、その倍言ってる。
はじい。
矢吹

矢吹