Omizu

晩菊のOmizuのレビュー・感想・評価

晩菊(1954年製作の映画)
3.7
【1954年キネマ旬報日本映画ベストテン 第7位】
林芙美子の同名小説の映画化。杉村春子演じる元芸者の金貸しを中心とした女性映画。

『めし』『稲妻』『妻』に続く黄金コンビだが、やはり相性がいいんだろうな。成瀬巳喜男らしい人情味と優れた人間描写が光る秀作だった。

杉村春子演じるおきんがとにかく小憎たらしい。「私は元売れっ子芸者であなたたちとは違うんです」とでも言いたげな人を小馬鹿にしたようなあの目!さすがは杉村春子。

とみの娘、たまえの息子も交えユーモラスに元芸者の女四人を描いている。元奥様だったたまえ、貧乏暮らしでもあふれ出す気品がいい。どうしようもない掃除婦とみを演じた望月優子は『日本の悲劇』のイメージそのまま。とみの娘、幸子のちゃっかりした快活な性格は有馬稲子に合っていた。

四人の女ととみの娘幸子を含めた五人の庶民としての暮らしをユーモラスに、でもやはり鋭く描写している。盛りを過ぎた女の悲哀、それでもなおしみったれた世の中で生きていくしかない。
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